竜の試練~竜の武を見せつけよ~②
流血表現があります。自身の判断でお読みください。
「ま・・待て!!お、俺が・・俺がいる!!」
震える声でブカブカの鎧を纏った少年が広場に走り込んできた
手に持つ剣はお世辞にもいいものとは言えない
剣は所々欠けており、手が震えているため剣も振るえている
「止めておけ。そんなに震えていたら攻撃する前に自分が怪我するぞ。」
「う、うるさい!!お、俺はな・・・こ、近衛兵隊長になりたいんだ!!なって家族を助けるんだ!!お前を、た、倒すんだからな!」
少年の目は恐怖を映しているが、どこか秘めた思いを持っている
「戦うことがどういう事か分かっているのか?」
「な、なんだよ!こ、子供扱いするのかよ!わ、分かってるぜ!殺すんだろう!俺は怖くねぇ!怖くねぇぞ!!」
両手で剣を構え、ブルブルと震える少年に竜将軍は棒を構えることなく一歩一歩近づいた
「何だよ!何で近づくんだよ!!」
少年と竜将軍の距離が近づくに連れ少年が悲壮な声を上げる
「・・・・・・」
「うわぁぁぁぁ!!」
少年は目をつぶり持っていた剣を竜将軍目掛け振り下ろした
少年は振り下ろした剣が地面に付くわけでもなく、どこかで停止させられていることに気づいた
そして剣を伝って生暖かい何かが手に触れた
恐る恐る目を開けると目の前に竜将軍がいた
少年より少し高いぐらいの身長だが竜将軍から発せられる覇気に見上げなければいけないと感じさせる
竜将軍を見ると少年が振り下ろした剣を左手で握りしめている
肉が切れ、血が溢れ、その血が剣を伝って少年の手に触れている
ポタッ・・・ポタッ・・・
赤いしずくが地面に落ち斑点を作る
「ひぃぃぃ!!!」
少年は剣を離して尻餅をついた
目の前で自分から人を傷つけたことのなかった少年は滴り落ちる赤いしずくが怖かった
「血が怖いか・・少年よ。」
威圧感のある声と雰囲気に少年がガタガタと震えている
瞳からは絶望に映し出され、止めどなく涙が溢れていた
「俺は血が怖い。血はな、生きてる証であり流し続ければ死んでしまう。血は生きることにとても関係がある。戦うことは血を流し、その者の生きることを奪うことだ。生半可な気持ちで剣を持ち、人を傷つけるな!」
語尾をきつく言い放ち竜将軍は剣を少年に返そうとした
「・・・だって・・・だって・・こうでもしないと・・俺の家族はどうなる・・父ちゃんは前の戦いで死んだ・・家に帰ったら働き手は俺だけだ・・・母ちゃんは体が弱いんだ・・・腹を空かせた妹たちや弟たちを守らないといけないんだ・・じゃないと売られてしまう・・俺が・・金稼がないといけないんだ!!俺が・・・ううっ・・」
ボロボロと涙を流しながら唇をかみしめる
「ならば、近衛兵にはいるか?俺の軍だ。誰一人として部下の兵はいない。」
「・・・へぇ・・」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔で竜将軍を見つめる
「何処の軍より厳しいが、俺が守ってやる。お前がもう剣を持つことのないように、家に帰って腹一杯飯が食えるような世にするため、手伝う気はないか?」
目線をあわせるように少年の傍に座り込み
「来る来ないは自分で決めろ。誰かに言われたから付いてくるんじゃない。自分自身で自分の道を見つけろ。」
「・・・・っぅ、俺付いてきます!!竜将軍に付いてきます!!」
「交渉成立だ。これで俺も負けるわけにはいかなくなったな。お前一人を養うために将軍を辞めるわけにはいかなくなった。」
立ち上がって上座を見つめる
「他に戦う意志のある者はあるか!!戦う意志がなければ終わりでよいか!!」
威圧的な声に一兵卒達は下を向き、ガタガタと震え、視線を彷徨わせる
「ではこれに「待て。」
竜将軍の声を遮って上座から声がする
「なんだ、李将軍」
「陛下。私が竜将軍と戦わせてください。このような強者と戦うことなど滅多にない幸運。是非とも、一戦交えたいと思います。」
李将軍、別名橙の将軍。もとは海賊の長をしていたが仲間の裏切りにあい、投獄されて所を何代前かの王に許され将軍に付いた者である。
戦いを好み、強者と戦うことをいつも望んでいる
将軍についてはまだ若年だが船を動かせば右に出る者はいないほど者だ
日焼けした肌に少し縮れた髪の毛
口の周りを囲む口ひげが海賊らしい風貌である
「・・・・「構いませんよ。将軍と手合わせが出来るなど滅多にない幸運。こちらこそ是非にと申し上げたい。」
王の言葉を遮り竜将軍が答えを出す
「面白い!!」
高見台からひらりと舞い降り、広場に着地した李将軍は背にあるマントをはぎ取り動きやすい格好になる
すぐさま李将軍の副官が将軍の愛用の武器である大刀を持ってくる
刃が大きく三日月状に反りあがり、光りを浴びてキラリと光る
広場に中心までお互いにゆっくりと歩く
広場にいた一兵卒は気絶している者達は引きずられ、我先にと広場から逃げ出した
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