竜の試練~竜の武を見せつけよ~①
少しではありますが、流血表現があります。
自身の判断でお読みください。
日が南天の空に高く昇ったとき閃王の使者が治療室にやってきた
「竜将軍。王のご命令です。広場にお越しください。」
使者に促されて、治療室を後にした竜将軍は陣の中央にある広場に向かった
そこは多くの兵が集まり円形の広場となっていた
上座には一段高くなった物見席で閃王や将軍達が椅子に座って成り行きを見守っている
「俺は見せ物か・・・」
ポツリと誰に呟くでもなく竜将軍から零れて声は誰の耳に届くことなく、風と共に消えた
カッカッカッ
音を立て歩き出し円形の広場の中央に立った竜将軍は頭を下げることもなく、ただ王を真っ直ぐに見つめた
「これより、近衛兵隊長に戦いを挑みたいという者の挑戦を受ける」
高見台から高々と宣言される声に、兵からの歓声が上がる
「この戦いは殺すことは御法度である。戦意喪失、武器を破壊など、負けを認めて時点で終了とする。では、まず最初の挑戦者は・・・」
「俺だ!!!!」
広場の周りを囲んでいる兵達を押しのけて叫んだ男
身の丈2メートルを超えるかというような巨体
手に持つ武器は一メートルを超える巨大な黒い棍棒
竜将軍と比べるとまさに大人と子供というような身長差
「俺は骸羅!!俺様が将軍だ!!」
広場に降り立つとブンブンと棍棒を両手で回す
空気を切り裂く音に兵達は歓声を上げる
「では両者は広場の中央に・・武器を構えよ。」
中央にたった二人は真っ正面からににらみ合った
武器を構える骸羅と違い、竜将軍は手に持つ身の丈より長い棒を片手に持つだけで構えようとしない
「オイオイ俺様に怖じ気づいたのか!!言いぜ今すぐ降参するなら、恥をかく前に止めてやるぜ!!」
武器を竜将軍の前に構えて笑う骸羅
「ふぅ~」
溜息をついた竜将軍は手に持っていた棒を地面に置いた
「そなた相手に武器を使うなど・・・・もったいない」
「な、な、何を!!!!!!今すぐ地面に叩き付けてやる!!」
激怒した骸羅は今すぐにでも襲いかかろうとした
「ま、・・もう言いよい!始め!!」
官吏の号令と共に駆けだした骸羅は真っ正面から棍棒を振り上げて竜将軍に叩き付けようとした
その瞬間、竜将軍は駆けだし、骸羅の懐に飛び込んだ
骸羅の踏み込んだ足の逆足の足首を掴むとおもいっきり持ち上げた
骸羅の重心はすでに前に向かっており、また棍棒の振り下ろしの勢いが重なり
顔面から地面へと倒れ込んだ
グキッ
重々しい音が響いた後
広場は一瞬で静かになった
骸羅の竜将軍によって持ち上げられた足はそのまま重力に負けて地面へと倒れた
180度回転して倒れた骸羅は顔には土がつき、鼻や口からは血が流れ、意識がない
竜将軍はすぐさま骸羅の傍に近寄り、首もとの脈をとった
「呼吸、脈正常。鼻が少し折れているか・・」
グッキ!
骸羅の少し曲がった鼻を正常な位置に戻し
「だれか白の軍に連れて行け。今は意識を失っているが、すぐに起きる。」
竜将軍の声に先ほどまで骸羅を押し立てていた者達がコソコソと現れて、引きずるように連れて行った
「次は誰が挑戦する!!」
竜将軍の声に兵達はお互いに顔を見合わせ、視線を彷徨わせた
それもそうだ
骸羅といえば璉国軍の中で兵士の中では群を抜くほどの乱暴者であった
その体格の良さから、軍功も上げるが軍で喧嘩などを日常茶飯事起こすため、問題児となっていた
だが強さは強かった
将軍達ですらその強さを認めていた
その骸羅が一瞬で、それも武器も持たない少年のような者に負けた
戦いを挑みたいが負けて恥をさらすことになることは避けたいと二の足が進まない
「面倒だ!何人かいっぺんに相手しよう!挑戦者はいないのか!!」
誰も広場には行ってこようとしないことに焦れた竜将軍は兵士達に向かって叫んだ
「だったら俺は行くぞ!」
「俺も俺も!!」
「一度に襲えば勝機がある!!」
一気に10人ほどの者達が広場になだれ込んできた
各々が持つ武器を振り上げ、襲いかかってきた
ある者は剣、ある者は槍、ある者は斧など武器は様々
竜将軍はすぐさま自分の棒を掴むと間合いを計りながら攻撃をした
狙う場所は武器を握る手を中心とした
的確に打ち付ける棒に誰もが武器を落とした
そして戦意を喪失させるため、顔のほんの触れるか触れないかの距離に棒を突きつけた
誰もが怯えて戦意を喪失させた
多くの者が広場になだれ込んできたが、今は誰も入ってこようとしない
広場は戦意を喪失した者達で溢れかえっていた
その数100、いや200人を越えているだろう
誰もが座り込み震えていた
その中でただ一人竜将軍が息一つ乱れた様子なく立っていた
服は少し破れはしているものの、外傷はない
「これで終わりか?」
戦う意志がある者が周りにいないことを確認して王の方を振り向こうとした
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