戦場を駆ける竜②
閃達率いる軍は丘の上から状況を判断していた
丘見える光景は人の動きを上から見ることが出来る
人々は璉国軍がいる南門には向かわずその逆である北門へと向かっている
「何をしておるのだ!!あの化け物は!!」
「あれでは人を救えぬではないか!!」
「やはり奴は敵なのでは?」
将軍達や官吏達から声が上がる
閃はその光景が信じられなかった
人々の動きは確かに驚きはした
しかしそれは町の人の動きではない
町の塀を囲む采駕国軍の兵の動きであった
塀の外の采駕国の兵士達は中の様子を覗うことは出来ない
中から聞こえる声で判断しなくてはいけない
中から聞こえる声は
「北門へ!!風上の北門へ向かえ!!」
大声で叫ぶ神楽の声だった
倒すべき敵の璉国の民が一カ所に集まる
これは好機と囲んでいた兵達が北門へと向かっている
他の門は最小限に兵を残し多くの兵士達が北門へと向かった
「攻撃を仕掛ける。向かうは北門以外の全ての門だ!!そして北門で左右から攻撃!南門からのものは内部から攻撃!!」
閃の声に将軍達はこれが好機であることに初めて気づいた
すぐさま馬に跨り、武器を持ち丘から駆けだした
北門に付いた神楽は丘にいる軍が動き出したことに気づいた
ホッとするのもつかの間、北門に集まっている大勢の民に叫んだ
「まもなくで璉国軍がきます。みなさんを私一人では救えません。みなさんの力を貸してください。」
北門へ案内した声の主を見る民の目は不信、怯え、恐怖に染まっている
「みなさんを守りたい!!だが、私だけではこの人数を守りきれない!!今こそ武器を持つときだ!!助かりたいなら、どうか聞いてくれ!!」
お互いに顔を見合わせ、決意し始める
「な、何をすればいい?」
「俺たちに何が出来る?」
生きようとする者達の決意に神楽は深く頷き
「いいですか!これからの指示に従ってください!!」
神楽の指示によって動き出した者達
・・どうか・・・うまくいきますように・・・
「将軍!璉国の民は北門に集まっているもよう。討つなら今が絶好のチャンスかと!!」
采駕国はこの戦いの絶対的勝利を確信していた
ここに配備されている軍は紗萄国の戦いのためここにいないことを知っていた
それもこの町の民は一カ所に集まっているようだ
わざわざ敵に知らせながら動くなど、愚の骨頂である
最後のとどめを刺そうと多くの采駕国の軍を北門へと向かわせる
多くの兵士達が北門に集まり
門を開けようと必死になる
大きな大木の丸太を力あわせて壁に打ち付ける
ドーン、ドーンと打ち付けるたび扉越しに怯える声が聞こえる
ニヤニヤとする笑い声がとまらない
中には女もいるだろう
手に入れた町の民は奴隷とすることが出来る
結婚していようが、何だろうが、女は戦争にきている男達の慰み者になるのが戦いの常だ
久々の女に采駕国の士気は高まる
いっそう大きな音が鳴り響いた瞬間扉が音を立てて崩れた
扉が待ち内部に倒れたて見えた光景は
この町を二分する大きな真っ直ぐな道が見えた
そして北門へに向かって駆けてくる自分たちが放り込んだ数体の虎
「な!!し閉めギャーーーーーーー!!!」
先頭に立っていた者達は後ろから押される力に戻ることが出来ず虎の牙と刃に襲われる
次々に襲いかかる虎に兵達は為す術なく攻撃される
「退け!退くんだ!!虎がいるぞ!!」
何処からともなく声が上がった
それに反応して一斉に宛もなく兵達が逃げ出し始めた
混乱した兵達は仲間を押しのけ逃げようとする
誰もが逃げることで必死だった
ダダダダダダダダダッ
大きな地鳴りがし始める
震える大地に足が取られる
「何だ何だ何だ!!!」
采駕国の兵達の恐怖がピークに達する
四方八方に兵達が逃げまどう
指揮を無くした兵達は誰の意見も聞かなくなる
最初に聞いた虎がいるという声が彼らを動かした
逃げまどう彼らを出迎えたのは両脇から現れた璉国の兵達であった
攻撃する間もなく采駕は降伏することとなった