戦場を駆ける竜①
流血シーンや残虐シーンがあります。自己責任でお読みください。動物に対して暴力行為がありますが、決して実際の動物にその様な行為をしないようにお願いします。
紗萄国との戦いから3日後紗萄国は和睦を璉国に求めた
璉国はこれを認め、両国は休戦をすることとなった
だが、璉国は休んではいられない
紗萄国との休戦決まったその次の日に、采駕国の侵略が報告された
その場所は二日もあれば着ける距離であった
この勢いのまま寀駕国にも勝利を得たい璉国はその場所に向かった
璉国はそこで信じられない光景を目の当たりにした
ここには大きな町があった
巨大な円の堤防の中に町はある
その町に入る入り口は縦横に大きな道の四カ所と小さい道の入り口が四カ所で計八カ所だった
だがその入り口は全て封鎖され、中から叫び声が上がる
その声と同時に獣の声も上がる
そして町から上がる黒煙からは焼ける匂いが広がる
璉国は恐怖におののいた
采駕国は円状の町の入り口を封鎖し、中に虎を何匹も放り込み
そして火を放った
火と獣に逃げまどう人々は堤防を乗り越えようとしたが堤防を囲む采駕軍の矢によって命を落としていた
これほど残虐行為が戦いで行われていたことはいない
兵達はあまりの光景に嘔吐する者や神に祈り出す者まで出ていた
「何と・・残虐な・・・」
「采駕国は何を考えているんだ・・・」
丘の上から見える光景は残虐だった
だがどうすることも出来ない
軍の規模はほぼ同等であろう
だが璉国は連戦を強いられている、軍の疲弊は強い
璉国が攻撃をするとなると一カ所からの攻撃となるだろう
そうなれば、必ずその周りを囲む采駕国から両脇からの攻撃を受ける事になる
「陛下、このままでは町一つ確実に滅びます。ですがこの町は貿易にとっては有数の都市です。このような場所を失えば璉国にとっては大打撃となるでしょう。」
将軍達や臣下達の進言に閃自身も進撃する決意を固める
「お!おいアレ見てみろよ!!」
閃が進撃の合図を出すより前に兵から声が上がった
白き馬に跨った者がただ一直線に町へと駆ける
采駕国も応戦として矢を放つ
大量の矢が馬とその騎手を狙う
だが、騎手はおもいっきり馬の胴を蹴り上げ、ジャンプを馬に促す
馬は騎手の思惑道理大きくジャンプする
その馬の背から騎手はさらにジャンプする
采駕国から放たれた矢は馬の全身に刺さる
馬は悲鳴をあげるが、騎手はすでに堤防の上に着地し、中へと飛び込む
堤防は5メートルほどの高さがある
中に入れば外から攻撃することは出来ない
閃達はその一連の動きをただ呆然と見ているしかなかった
その者の顔には白い仮面が付けられていた
神楽は中の状況を見て愕然とした
町の3分の1が火災そ損害を受けている
火の中から逃げ出る者もいれば、虎から逃げるために火の中に飛び込む者、地獄絵図が広がっていた
このままではいけない・・何とかしなければ!!!
「民よ!!風上の北門へ向かえ!!!北門だ!!走れ!!」
神楽は大声で叫んだ
それに気づいた者は仮面を付けた者に怯えはした者の助けてくれるなら藁でも掴むように北門へと走り出した
「北門へ!!動ける者は北門へ向かえ!!」
一人一人走り出すと続くように多くの者が北門へと走り出した
「きゃーーーーーーー!!!」
走りながら指示を出していた神楽は前方から悲鳴を聞いた
すぐさま手に持つ身の丈以上の棒を持つ手に力が入る
悲鳴の聞こえた場所にたどり着くと
体長2メートル以上ある虎が子供とその母親に襲いかかろうとしていた
親子は壁に追い込まれ怖さで座り込んでいる
虎は舌なめずりをして襲いかかろうとしていたが、横面に棒が叩き付けられ、その勢いは止まる
ぶつけられた棒に腹を立てた虎はぶつけた者を睨みつける
棒を前方に構えた神楽は虎の気迫にも負けじと虎をにらみ返す
「・・そこの親子、動けるか?」
いきなりの問いかけに親子は完全に腰が抜けていて動けそうにない
火の手は多くの場所で上がっている
ここであまり時間を使うわけにはいかない
握りしめる棒に力が入る
その動きを読み取った虎が先制攻撃を仕掛ける
一気に駆け寄り、右足の鋭い爪と牙が神楽目掛け襲いかかる
カッ!!
神楽は両目を見開いて棒を虎の空いている左顔に叩き付けた
バランスを崩した虎は横出しのように地面に倒れるが、再び足を付いて立ち上がろうとした
だが、2,3歩歩くとバタンと倒れた
「ふぅ・・・」
口から泡を吹いている虎を動かないことを確認して神楽は息を吐いた
虎は神楽の攻撃で軽い脳震盪を起こし、歩行困難で倒れた
殺したわけではないので、時間が経てば動き出す
近場にあった布きれを裂いて虎の前足と後ろ足を縛り口にも開かないようにグルグルに巻き付けた
「・・・動けます?動けるなら北門に向かいなさい。壁伝いに歩いて進みなさい。虎が襲ってきたら、松明を向けて襲われないようにしなさい」
簡単にではあるがそこら辺に落ちている棒の先端に布を巻き付け油をつけ、火を付けた
赤々と燃える炎を震える母親に渡す
手渡すときに母親が行かないでというように神楽の手を握る
その力は強く神楽の手に母親の爪が突き刺さる
「しっかりしなさい!!母親でしょう!!この子供を守れるのはあなたしかいないの!!他にも助けを求めている人はいるの!!あなただけを守ることは出来ないの!!歩みなさい!!」
母親の目から止めどなく溢れていた涙は止まり、意志がともった
「行けますね?」
最後の神楽の問いに母親は大きく頷いた
その姿を見終えると神楽はまた駆けだした
「北門へ!!北門へ!!風上の北門へ向かえ!!」
神楽の声は大勢の耳に届いた
流されるように人々が北門へと向かう
その様子を見ながら、神楽は町の中央にある広場で振り返った
その広場から閃の率いる軍がいる丘が見える
ちょうど太陽側の南門側ため長く見ることは出来ないがそこにいるのは分かる
・・閃・・あなたなら分かるはず・・私があなたにどうして欲しいか・・・みんなが助かるために・・・動くべき時はもう間もなく!!
持つ棒に力こめ、神楽は駆けだした
長かったので2部に分けます。
敵の国命変更しました。