懇願のプロポーズ②
閃は一人神楽と初めてあった場所にいた
何かに悩んだとき、悲しいとき、剣の練習をするときこの場所に来てしまう
ガサリと音がした方に目を向けると神楽が立っている
いつもこの場所に迎えに来るのは彼女の役目だ
「・・・帰ろう、閃。お母さんが待ってるよ。」
「・・・神楽。俺はお前達家族に必要ではないのか?俺はやはり誰からも必要とされないのか・・・・。」
閃が顔を伏せ、握りしめている拳が震えている
「・・・・閃は家族だよ。家族なら家族の幸せを祈る。それが当たり前でしょう。閃がどこに婿に行っても閃の幸せを祈ってる」
神楽は自分を褒め称えたいと思った。笑顔でこんな嘘がつけるとは自分自身思ってはいなかった
閃が誰かの横に笑って過ごすなんて事を考えるだけでもいやだった
「だからね、閃。家に帰ろう。」
閃の大きくなった背中に手を置き顔を覗き込む
閃は何かに耐えるように目をつぶり
口を開いた
「・・・・神楽。俺・・・俺が好きなのは・・・お前だ。」
「えっ・・・」
狼狽えた瞬間神楽の足は後ろに一歩下がってしまう
だがそれを閃の手が引き留める
「俺は、お前が好きだ。家族だからじゃない。神楽というお前が好きだ。結婚するならお前以外考えられない」
あまりにも真剣な閃の黒い眼に吸い寄せられる
嬉しいといきなりの告白に神楽の頭の中は混乱していた
「な、何、言ってるんだ閃。だっ、だって私まだ子、子供だし・・か、家族だよ。」
「神楽!お前が子供だというなら、お前が成人するまで待つ。家族じゃなくて俺をきちんと見てくれ!」
神楽の腕を閃が握りしめているので離れることが出来ず、神楽はイヤイヤと下を向いて首を振り続ける
閃の瞳を見たら私も好きだと伝えたくなる
いつもだったら簡単に離せる閃の腕が何故が重く離れない
ぐいっと力強く引っ張られ閃の胸にダイブする
閃が包み込むように神楽を抱きしめてくる
閃の鼓動が聞こえる
まるで全力疾走したかのように胸板を通じて伝わる
ジワリと瞳に涙が集まって限界を超えた
「・・・・泣くほどイヤか・・・」
ポツリと言われた台詞に神楽は首を振る
「神楽、頼む・・・俺の妻になってくれ・・・」
閃の懇願にも似たプロポーズに神楽は横に振っていた首を縦に振った
「!!!!」
急いで閃は神楽の顎を上に向かせた
「い、いいのか?」
「大好きです・・・閃。傍にいたいです」
その後は神楽を力強く抱きしめ
「ありがとう」
と、耳元で何度も何度も閃がささやいていた