意地悪な義姉に転生したので意地悪してみた
「お前たちは今日から伯爵令嬢よ」
何言ってんだこの厚化粧ババア。
寝起きに母親から寝言言われて私はそう思った。
ボロボロの今にも倒壊しそうな下町のきったねえ集合住宅の二階。冷たい隙間風が入り放題の部屋で小さな妹と身を寄せ合って眠っていた私は大変ご機嫌斜めだった。
夜中まで急ぎの繕い仕事をして今日は思う存分寝てやるぜと薄っぺらい毛布に潜り込んだところだったのだ。いい加減にしてほしい。
こちとら家に金を入れずに気が向いた時だけ酒場で娼婦もどきの酌女してるお前の代わりに小銭稼いでなんとか妹食わせてんだよ。十歳児が頭下げてなんとか優しい大人の同情でお仕事もらって飯食ってんのよ。令和日本だったら虐待で通報だからな。子供の権利のない世界なんてクソ喰らえだよ。
私が転生者とかいうファンタジー的存在じゃなかったら妹もろとも餓死か凍死の未来しか見えないんだわ。まっじ風呂も便所もねえ中世ファンタジー世界とか令和日本人生きるのつらすぎ。部屋の隅に置いてある桶を便所だなんて私は認めねえかんな。
ノミとシラミと戦う異世界転生ファンタジーとか誰も求めてねえっつうの。
白けた目で自分を見る娘のことなんて歯牙にもせず母親は毛布の中から私と妹を引き摺り出した。
寝ぼけ眼の妹がベッドから落ちて痛いと泣いたが母親は機嫌良さそうに鼻歌を歌う。耳障りで下手くそな歌だった。
ギシギシと軋む集合住宅の階段を引きずられるままに降り、共用水場で服も脱がないまま水をぶっかけられる。
冬の名残の残る春さき。夜明け前の一番冷え込む時間にやることじゃない。心臓の止まりそうな水の冷たさに妹を抱きしめてかがみ込むと母親が舌打ちした。
「ちゃんと洗いなさいよ、あんたたち臭いの」
びしょ濡れの頭にクリーム状の何かを塗られてガシガシと乱暴に洗われた。水で流して何度か繰り返すと少しだけ泡がたった。多分石鹸だったんだろう。転生して初めて見た。あったんかよ石鹸! とこんな状況じゃなきゃ叫びたかった。水で濡らした布で頭と体を拭くのが風呂がわりだったし石鹸なんて存在しないもんだと思ってた。
前世ぶりの石鹸との再会は水の冷たさでそれどころではなく終わる。
濡れた服を脱げと立たされ、寒空の下で素っ裸にされた。体にもヌルヌルする石鹸を塗りたくられて冷水をぶっかけられる。ゴワゴワした布で雑に拭き上げられ、この世界に生まれてから初めてというくらいに清潔になったが歯の根も合わないほどにぶるぶると寒さに震えていては感謝どころか殺意しか湧かない。
いや、先に私と妹が凍死するがな。
そんな私の恨みがましい視線に気がつくことなく母親はどこから持ってきたのか今まで見たこともないしっかりした作りの洋服を着せた。
頭からすっぽりと被ったワンピースは足首まで滑らかな布地を使った贅沢なもので妹は寒さに震えながらも目を輝かせた。
氷のように冷たい濡れた髪が頰に張り付いた。
磨かれた体、真新しい高価な服。嫌な予感しかしない。
これ、幼女趣味の変態に売られるんじゃねえのか?
ところがどっこい、私の不安は杞憂だった。
こんな都合のいいことあるとかやべえな異世界。
母親に連れて行かれたのは饐えた匂いのこもった小汚い酒場だった。
これはますます人身売買フラグ、と緊張したが暫くして現れたのは下町の酒場には不似合いな清潔なジャケットの紳士だった。
少し下がった眉が頼りなさそうな痩せた中年男は今生では見たことのないピシッと糊のきいたシャツを身に纏っていた。
こんな一見まともそうに見えるふにゃふにゃした男が幼女趣味の変態だなんて、この世界本当に終わってんな、と思った。
まあ、前世でもまさかあの人がなんて事件はいくらでもあった。見た目で判断してはいけないのだ。
妹の肩を強く抱きしめて警戒する私を気にすることなく母親はその男にしなだれかかり、発情した雌猫のような声を出して体をくねらせた。本当に下品な女だ。
白けた目で母親を見る私とは違い、男はやにさがった顔で母親を抱きしめた。腰を抱き寄せてこめかみに口付ける。中年のおっさんとおばさんのイチャイチャとか見たくねーんだわ、そういうのは人目のないとこでやってほしい。
それから母親は私と妹を見て、あの子達よ、と男に囁いた。
男はチラリと私たちを見て、君に似て可愛い子たちだね、と母親に言う。
正直、私と妹は母親とは似ていない。髪の色だけはよく似た赤毛だったが、顔立ちは多分それぞれの父親似だ。多分、なのは父親の顔を知らないから。赤毛以外に共通点のない私たち姉妹の父親は酒場の客じゃないかな。知らんけど。
つまり、中年男の目はうちの母親にお似合いの節穴だってことだ。
中年男は母親と見つめ合ったまま酒場の前に乗りつけた馬車に乗り、母親に急かされて私達も馬車に乗り込んだ。
そうして人生初の馬車でたどり着いたのはお綺麗なお屋敷街に並ぶ瀟洒な洋館。
ここが今日からお前たちの家だよ、と迎え入れられたのだった。
この馬鹿野郎ども、ちゃんと説明ぐらいしやがれ。
目を丸くする妹の隣で私が死んだ魚の目になるのも仕方ないことだと思うわけよ。
結局、きちんと現状が理解できたのはその日から一週間ほど経ってからだった。
寒空に水ぶっかけられて生乾きの髪のまま連れ回されましたからね、私も妹もその日の夜には熱出して寝込みましたよ。当たり前やろがい。
綺麗なベッドで手厚い看護を受けられたのはありがたかったが、犯人の母親は一度も見舞いに来なかった。知ってるー、お前はそう言う女。
寝込んでる間に母親はあの中年男の後妻になっていたそうだ。厚化粧がさらにケバくなって屋敷の中を我が物顔で歩いていた。
中年男はマーリブル伯爵代理、貿易商を営むマーリブル伯爵家の娘婿で半年前に伯爵だった妻が亡くなり一人娘が成人するまで爵位を預かることになったそうだ。
えー、代理人の後妻の娘って別に伯爵令嬢でもなんでもないじゃん。この国の法律とか全然知らんけど、娘が爵位継いで婿が代理ってことは血統主義なんでしょ? 貴族の血を一滴も引いてないうちら姉妹が伯爵令嬢になれるわけないじゃん。ババア完全にボケてやがるな。しかも、前妻が亡くなって半年で再婚とか娘婿の分際で生意気じゃない? 前妻の親とか親戚から反感買わないの?
「旦那様は商才があるのよ。亡くなった先代様が投資だかで失敗して立ち行かなくなった商会を立て直してマーリブル伯爵家はなんとか持ち直したの。みんな、旦那様には頭が上がらないのよ。旦那様にそっぽを向かれてまた貧乏生活に戻るのは嫌だからね」
厨房の端で芋の皮をショリショリと剥きながら不思議に思って尋ねるとベテラン調理人のオバちゃんが教えてくれた。
なんで芋剥いてるかって? 働かざるもの食うべからずだからだよ。つか後妻の娘だって連れてこられたのにその後妻も旦那様も子供たちを放り出して特に指示も出さなかったから使用人もどう扱っていいのか困ってんだよね。ほんとすまんね、うちのババアと節穴が。
特に何をしろとも何をするなとも言われていないのでクローゼットの中に入っていた全然サイズの合っていない服の中から一番地味なものを選んで使用人の真似事をしている。来てすぐに寝込んでいたので使用人には私たちの顔がほとんど知られていないのをいいことに厨房にお邪魔して「先日からお世話になっているものです、何かお手伝いできることありませんか?」と声をかけて下働きの仕事をもらった。来たばかりで分からないことばかりだと言うとオバちゃんたちが色々教えてくれる。おしゃべりしてても手は常に動いている。さすがだぜプロのオバちゃん。
私の隣で妹も器用に芋を剥いていく。七歳でこんな器用に剥けるなんてうちの妹は天才じゃなかろうか?
上手に剥けてるね、と褒めると嬉しそうに笑う。乳歯が抜けて前歯が一本足りない間抜け顔だが大変可愛い。私が育てました。
「先妻のお嬢様はどうされてるんですか?」
ふと気になって聞いてみた。一週間寝込んでたし、そのあとは主に下働きエリアをうろちょろしてたから全然見かけてない。
お嬢様は妹の一つ上の八歳。母親を亡くしてまだ半年の子供だ。後妻の連れてきた娘なんて見たくもないだろう。近付かんようにしとこ。
「お嬢様は離れに移動されたって聞いたわねえ」
は? 伯爵家の正統な令嬢が離れで? 後妻が本館にでかい顔して居座ってるの???
私は思わず手を止めてオバちゃんの顔を見上げてしまった。
オバちゃんはそんな私に肩をすくめて鍋をかき混ぜた。りんごのピューレの香りがふわりと広がる。
「旦那様が母親との思い出が多いところではいつまでも悲しいままだろうって。お優しいのさ、ただちょっと気の遣い方がズレてるんだろうね」
商売はできるのに、人の気持ちには鈍いお人なのだろう。
あとめちゃくちゃ目が節穴。よくそれで商売できてるよなあ、才能しゅごい。
それにしても、もしや私はドアマットヒロインの意地悪な義姉とかいうやつか?
前世のネット小説とかでよく見たパターンだよ! ざまぁされる意地悪義姉に転生してざまぁ回避するやつでしょ! 親の顔よりよく見た『なろう』の短編ランキングー!
前世の私は通勤時間に短編のネット小説を読むことを習慣にしていた。本持ち歩くより嵩張らないし、短編ならサクッと読み終えて気になるところで到着なんてことがなかったからだ。ありがたいことにネット小説投稿サイトには無料でサクッと読める短編が大量に投稿されていた。サイトのランキング上位から気になった題名のものを摘む毎日。よく読んだのは『ざまぁ』もの。憂鬱な朝にスカッと『ざまぁ』で気分爽快に出勤である。
作者の皆様ありがとう。前世の私の社会生活は皆様の活動により支えられておりました。
この『ざまぁ』に『転生』がくっついているとかなりの確率で『ざまぁ』回避とか『ざまぁ』返しなどの派生ジャンルになる。私は詳しいんだ。『ざまぁ』ソムリエと呼んでくれ。
ともかく、私の前世で読んだネット小説を参考にするならこの世界は継母に虐げられる伯爵令嬢が継母とその娘を『ざまぁ』する物語世界であろう。
物語世界ならもっとファンタジーが良かった。一瞬で体が綺麗になる生活魔法とかある世界に転生したかったよお。ノミとシラミと戦う貧乏戦記なんてお呼びじゃねえんだよお。
なーんてね、全部私の妄想でーす。
この世界がなんかの物語世界であろうと原作がわからないなら意味ない。そもそもスタート地点がマイナスすぎて生きるだけで精一杯。自分と妹を生かすことだけで私の手は塞がっちゃってるのよね。
だからさ、可哀想な子供は大人に助けてもらってよ。
厨房でもらった端のこげたビスケットにジャムを挟んでハンカチに包んだ。ハンカチの結び目を輪っかにして妹に渡せばピクニックの準備は完了だ。
マーリブル伯爵家の庭は広い。つるバラのアーチをくぐり花壇に咲いたラベンダーの香りを嗅いだ。目的地にはこれまた可愛らしい色とりどりの花が咲く寄せ植えの花壇があり妹は、わあ、と可愛らしい声をあげた。
伯爵家の本邸に比べれば小さいが御伽話の妖精の家のように可愛らしい離れの館。手入れの行き届いた花壇の隅でしゃがみ込んでいた女の子はその館に相応しい妖精のように可愛らしかった。
「だあれ?」と目を丸くしてこちらを見る女の子の金色の髪を見て、妹はお姫様みたい、と呟いた。これはまさしくヒロインちゃんだねえ。私は目を細めて「あんたのお父さんと結婚した女の娘」と自己紹介した。
私の言葉を聞いて緊張と恐れに彼女は身を強張らせた。まあうちのババアやりたい放題だからね、使用人から嫌な話も聞いてるだろね。
私と妹は花壇のよく見える芝生に座って足を投げ出した。天気が良いので少し温まった芝生が気持ちよかった。彼女は行儀の悪い私たち姉妹にびっくりしていた。育ちが悪いのでね。
妹がハンカチを広げてビスケットを取り出す。ジャムを挟んだビスケットは三つ。一つは私に、一つは自分に、そして最後の一つを彼女に差し出した。ニコニコと前歯のない間抜けな愛らしい笑顔で。
彼女は恐る恐るそれを受け取って私たちの近くに座った。
端のこげたビスケットはちょっと硬くて水が必要だったなと後悔した。贅沢に砂糖をたっぷり使ったいちごのジャムは伯爵家に来て初めて食べた。妹のお気に入りだ。固いビスケットを食べづらそうに、でも幸せそうに一生懸命に食べてる妹は可愛い。
「あんたさ、頼りになる親戚とかいないの?」
ちまちまとビスケットに齧り付くヒロインちゃんに直球ストレートで聞きたいことを投げつける。
ビスケットに口の中の水分を奪われた彼女は目をぱちぱちさせて私を見た。
私は妹のほっぺたについたビスケットのくずを指で落としてやりながら続けた。
「あんたのお父さんさ、ちょっと変な人じゃん? うちの母親も結構やばい人だからさ、他に頼れる人いるならそっち頼った方がいいよ」
お前の親父、女を見る目の全くない節穴男だから、とは言いづらかったので変な人ということにしておく。母親を亡くしたばかりの娘を離れの屋敷に追いやる父親は変な人であることは間違いないので。
ヒロインちゃんは私の言葉に顔をくしゃっと歪ませた。なんか悔しいのか怒りたいのか悲しいのか、その全部なのか、とっても複雑な表情だ。
「うちの母親は常識とかないからさ、周りは自分に都合がいいか悪いかだけ。気に入らなきゃ平気で子供だって殴るような人だよ」
まだ赤子の妹が泣いているのを煩いと言って床に投げ捨てようとした時に私はこの女に子供を任せてはいけないと決意した。ちなみに私が赤子の時は祖母が面倒を見てくれていた。妹が生まれる前に亡くなってしまったので三歳の私が赤子の妹の面倒を見るしかない。三歳児の力では物理的に大変厳しかったよ。転生ファンタジー長女じゃなきゃ挫けてたね。
「お父様は、」
ヒロインちゃんはビスケットを飲み込んでから口を開いた。
「叩いたりすることはないけれど、あまり私に興味はないの。お父様は損得で判断する方だって、お母様は言ってらっしゃったの。伯爵家の損になることはなさらないけど、得にならないことにも興味をお持ちにならないって」
私は子供でまだ損にも得にもなってないから、興味ないのよ、と寂しそうに笑う。
節穴男はだいぶやべえやつだなと思っていたが、八歳の娘にそんなこと言うなんて亡くなった女伯爵もなかなかあれな人だな、と私は鼻を鳴らした。下町仕草で失礼。
「うちの母親みたいなのに引っかかるなんて女を見る目のない可哀想な人だと思ったけど、似たもの同士なんじゃない。お似合いなのね」
損得にしか興味のない男がなんでうちの母親みたいのを選んだのかはわからないけど、節穴男にとっては損じゃなかったんだろね。貴族の後妻を取るより金がかからないとか、娼婦のところに通うよりは外聞が悪くないとかじゃねえの。知らんけど。
きっと節穴男にとって娘が母親を想って悲しむ時間は無駄だと思ったんだろうね。だから離れにやった。
「あんたやっぱりここにいない方がいいよ。ちゃんとあんたのこと大切にしてくれる人いないの?」
ヒロインちゃんの顔がくしゃりと歪んで大きな目が涙で潤んだ。
八歳の子が誰もお前を大切にしていないと言われたら、まあ、泣くよね。
妹は泣き出した女の子にハンカチをそっと差し出した。ヒロインちゃんはありがとうと受け取って涙を拭った。ビスケット包んでたからちょっと滓が付いてたけど、妹の優しさはプライスレス。
「大叔父様に聞いてみる。お祖父様の弟なの。お母様のことを自分の娘のようなものだっていつもおっしゃってて、私のことも可愛がってくださるの」
少し震える声で彼女はそう言った。
いるじゃん、頼れそうな親族。
私は頷いて立ち上がった。ピクニックは終了だ。そろそろ厨房で夜の支度が始まる。
「じゃ、まあ頑張ってね」
妹も立ち上がってヒロインちゃんにバイバイと手を振る。
ヒロインちゃんも手を小さく手を振ってくれた。
「あなたたちも」
お互い親に苦労させられるもの同士のちょっとした共感。小さく笑って私たちは別れた。
きっともう会うことはないだろうけど、ヒロインちゃんの幸福をお祈りしておきます。
まあ、きっと私が祈らなくても最後は幸せになるんでしょうけどね。
その後、すぐに彼女はマーリブル伯爵家を出た。母親の思い出が詰まった屋敷にいるのは辛いので静養のために大叔父の家に滞在したいと自ら願い出た。父親は快く送り出し、後妻は我関せず。
伯爵家のご令嬢が静養のために家を出る慌ただしさのどさくさに紛れて私たち姉妹も伯爵家をこっそりと出た。
もちろん勝手に抜け出したわけじゃない。
行儀見習いのためにマーリブル伯爵家の寄子にあたる男爵家に奉公に出たのだ。本来なら後妻である母親が紹介状を書かなくてはいけないのだが、そんなことうちの母親にできるわけもないのでメイド長に書いてもらった。初めは渋っていたけど、節穴男に暇だから行儀見習いに行きたいとお願いしたらオーケー出たので書かせた。そうだね、暇は時間の無駄だよね、合理的思考だね。
伯爵家の紹介状とはいえ後妻の連れ子の平民なので男爵家の下働きを妹と一緒に真面目に二年くらいやってたら、マーリブル伯爵家の商会で伯爵代理も同乗していた貿易船が行方不明になったと大きなニュースになった。
貿易船の損失で銀行からの借入金を返済できなくなったマーリブル伯爵家は貴族街の屋敷を手放し、後妻は金目のものを持って行方をくらませたらしい。
マーリブル伯爵家の縁者は金策に天手古舞だと男爵家の旦那様が不安そうにぼやいていた。私たちももし伯爵家に残っていたら母親の夜逃げに巻き込まれるかした可能性。私たちが男爵家にいるのを知ってるのは行方不明のマーリブル伯爵代理とマーリブル伯爵家のメイド長くらい。ほぼ縁を切って平民として働いているのでさっさと出ていってよかったねー、と大人の歯が生え揃った妹と笑った。歯が生え揃った妹もとても可愛い。
そんな状況でお嬢様はどうしているのかとちょっと心配していたら、私たちの身元を知っている男爵家のメイド長がこっそり教えてくれた。
伯爵家のご令嬢は寄宿学校に入ってらしてマーリブル伯爵家が落ち着くまではそちらで保護してもらっているから安心してね、と。
私は根性で笑顔を浮かべてよかったです、とメイド長に感謝を述べた。
寄宿学校のご令嬢、貿易船で行方不明の父親、あれれー、なんだか見たことあるぞー。
シンデレラパターンの意地悪な義姉だと思って意地悪してヒロインを家から追い出したけど、まさかの小公女パターンのヒロインだった件。
追い出す必要なかったんちゃうか、これ。なんかマジごめん……。




