13 もう急展開すぎて……
◇◇
そう誓った日を思い出し、今の自分の情けない磔姿に嘆く。
「うぅ~……俺はもう終わりだぁ~……。このまま死ぬのか……。」
シクシクと泣きながら憎悪に顔を歪めるアース様や若い騎士達の顔、そして泣きながら俺を見上げている村長やジロ、ニコ、他の村人達の皆を見回した。
そして松明の火が、俺の足元の薪に近づき、そして────……。
ビュンッ!!!
火が触れる直前で突然強い風が吹き荒れ、意気揚々と火をつけようとしていたアース様と若い騎士たちが吹き飛ばされる。
羽織ったマントはピラピラと捲り上がり、俺はまたしても恥ずかしい格好を晒すことになってしまった。
「ぎゃああぁぁぁぁ!!!」
「ヒィィィ~!!!」
全員地面に這いつくばり、必死に飛ばされない様にする中、磔台前には……大激怒しているスカイ様がいつの間にかいる。
「……何をしている?」
ジ〜……とマントが捲れた俺の身体を凝視しながら尋ねてくるスカイ様に、俺は極めて冷静に返した。
「……このまま俺は処刑されるらしいです。」
「ハァ?」
スカイ様は、満身創痍で戻ってきたアース様と若い騎士達をギロリと睨む。
そんなスカイ様の目に怯えたアース様は、オドオドしながら俺を指さした。
「スカイ様!!あの目障りな中年は、跡形も残さず始末するのでお任せ下さい!あんな卑猥な格好をしてスカイ様を誘惑する様な変態……っ!!」
「そうだそうだ!!この特殊性癖オジさん!!」
「キモいんだよっ!!この変態中年!!」
ギャーギャーと騒ぐアース様達を睨みつけながら、スカイ様は磔台を剣で切り俺を下ろしてくれる。
そして、まるで守る様に腕の中に優しく抱きしめると……アース様達へ剣を向けた。
「ムギを処刑する?……ふざけるなよ。死ぬのはお前たちだ。」
「そっそんなっ!!俺はスカイ様のためにっ!!」
アースさんがショックを受けながら訴えたが……スカイ様は容赦なくブンッ!と剣を振って、またアース様をふっとばす。
「わぁぁぁぁぁ!!!」
憐れなアース様がゴロゴロと転がり、い草の山に衝突して埋もれてしまうと……俺は処刑されずにすんだ?という事実に一気に力が抜けた。
すると、一応助けてくれた?スカイ様が腰を支えてくれたので御礼を言おう────としたが、スカイ様はそれより先に口を開く。
「俺は貴様を助けてやった。そうだな?」
「は、はい……。ありがとうございます……??」
元を正せばコイツのせいじゃ……?
そう思わなくもないが、とりあえず助けてくれた御礼を告げた。
すると、スカイ様は……ニヤァ~!と邪悪な笑みを浮かべて見せる。
「くくっ……じゃあ、俺は貴様の命の恩人というヤツだ。そうだな?」
「は、はぁ……。」
元々の原因は全て貴方なんですけど……?
少〜しだけ物申したいと思ったが、とりあえず間違ってはないので頷くと、スカイ様はハァ~……!と大きく肩を竦めてため息をついた。
「全く!じゃあ、仕方ないから結婚してやろう!
まさかこんな農夫如きと結婚する羽目になるとは……まぁ、仕方ないな!!俺はカッコいい光の勇者様だから!!」
「はいぃぃぃぃ???」
とんでもない事を言い始めた光の勇者様に、俺も皆も目ん玉が飛び出す。
どこをどうしたら結婚という話になったのか……サッパリ理解できずに、俺は慌てて言った。
「あの~……なんで結婚するんですか……?」
ビクビクオドオドする俺の前で、スカイ様は目元を覆い、さも仕方ない!と言わんばかりの仕草を見せる。
「助けてもらったヒーローに一目惚れしてしまうのは普通だろう?カッコいいから。
お前は俺の事が好きで好きで仕方がない。
それで諦めきれずに犯罪に走られては、光の勇者としての名がすたるからな。この俺に感謝しろ。分かったな?」
「は……はぁ……。」
もう本当にわけがわからなくて、反論する事もできずにとりあえず頷くと、スカイ様は真っ赤な顔で、プイッ!と顔を背けた。
そしてポカンとしている騎士たちへ向かい大声で叫ぶ。
「光の勇者として、こいつは俺が責任をとって監視しよう!ほら、さっさと俺達が住む家を建て始めろ!」
「「「???は、はい……。」」」
俺同様、サッパリわけが分からないといった様子の騎士たちだったが、スカイ様に逆らう事はしない様子で、昨日乗ってきた馬車や追加でやってきた荷台車へと走っていった。
そして積まれていた材木や何かの金具などを手に、突然日当たりが良い場所へトントンカチカチと家らしきモノを建て始める。
「……?…………?????」
もう展開についていけない俺が呆然としていると、スカイ様はパチンッと指を弾く。
すると、どこから現れたのか、たくさんの侍女さんらしき女性が並び、スカイ様に頭を垂れた。
「なんなりと……。」
「ムギの身体を清めて着替えさせろ。今から結婚式を行う。」
「はぁぁぁ~????」
もう本気で意味不明な展開だが、侍女さんは流石プロというか……無表情で俺の両脇に手を入れ、そのままズルズルと引きずっていった。
「あの……っ!ちょっ……!!!」
散歩を嫌がるワンチャンの様に踏ん張ったが……侍女さんは何かの戦闘能力持ちなのか、俺より遥かに力が強く、その歩みは止まらない!
そのまま村の会議小屋と呼ばれている、村の中で一番広くてきれいな一軒家風の施設の中に引きずり込まれて……俺はマントを剥ぎ取られた。
そしてそのまま、小屋の裏手から出た所にある、馬などの家畜を洗う場所へと連れて行かれると、大きな桶の中にドボンッ!される。
「まずは身体を洗いましょう。」
「その汚い肌を徹底的に……。」
「きゃ……きゃぁぁぁぁぁ!!!」
淡々とお仕事をしようとする侍女達を前に、俺はまるで女性の悲鳴の様な声をあげて逃げようとしたが、そのまま石鹸でアワアワにされてしまった。
その姿は雲のお化け!
助けて~!!と叫ぶ間もなく、恥ずかしいブラジャーや紐パンツも剥ぎ取られてしまい、逃げ場を失う。
「わ……わぁぁぁぁ────ん!!!」
その後は、初めて女性の手で丁寧に洗われ……もう情けないやら恥ずかしいやらで、固まったまま、大人しく現れる羽目に……。
「まぁ、なんて汚い……。」
「これは洗い甲斐がありますわね!」
白い泡が茶色く変色していき、新たに投入されていく石鹸の泡が白いままになる頃には……俺の肌は健康的な小麦色から、なんと羽を毟った後の鶏の肌の色くらいになっていた。




