表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

「龍」夜闇を飛ぶ

〈坐布團を欲しがる猫や暮の秋 涙次〉



【ⅰ】


カンテラはテオに命じて、「猫nekoふれ愛ハウス」の猫に、彼らにとつての眞相をインタヴューさせた。と同時に猫のホロコーストを止めさせる為のネゴシエイトを、對役人に慣れたじろさんに依頼した。

今出來るのはそんな事ぐらゐのものだ。と云ふか、論理を飛躍させて魔王・ルシフェルのせゐで猫逹が叛人間的態度を取つてゐる、と決めつけるのは容易いが、それでは何の解決策にも結び付かないだらう。



【ⅱ】


テオ「きみ逹何で人間が嫌いになつたの? 食べ物くれるいゝ人もゐるよ」-元野良猫A「俺たちにも良く分かんねえんだけど、或る日突然、人間嫌ひになつてたんだ。今では愛想いゝ人間ほど嫌な者はない」-テオ「理由が知りたいんだけど。きみ逹はこの『ふれ愛ハウス』をだう思つてるのかな?」-「餌を漁らなくてもいゝのは大いに結構。だけどこんなの善意の押し付けぢやんか」-「...」-「あゝだけどテオさん、本当の事云ふと、山羊頭の不思議な人に注射されてからの事なんだ。俺ら叛抗し始めたのは」-「お、その言葉、待つてたんだ(やうやく話が核心を突いた)」テオは、石田玉道の云ふ「ワクチン」- それを接種したのはルシフェルである、と云ふ証言を、猫から抽き出す事に成功したのである。



【ⅲ】


じろさん。しかるべき國の機関に、「動物愛護の精神から、野良猫の焼却処分は止めさせるやう、地方の自治體に働きかけて下さい」と届けを出すと共に、カンテラから預かつた(必要經費が掛かるよ、と主張したのはじろさん自身であつた)「機密費」を役人に手渡した。百萬圓ほどである。所謂袖の下。この金額で云ふ事聞く日本の役人はレヴェルが低い。お安い御用、とはこの事だ...



※※※※


〈丁寧にアシスタントに任せずに自分で描けば漫画は違ふ 平手みき〉



【ⅳ】


さて、下準備は整つた。* カンテラ「そつちがワクチンなら、こつちは『聖水』だ!」さう、薩田祥夫に新たな「聖水」を分けて貰ひ、それを叛抗猫に振り掛けると、あら不思議、元の可愛い猫ちやんに戻る事、實地に確かめてあつた。今では「ふれ愛ハウス」の猫逹は、強情張つて餌を拒否したりしない。「ごろにや〜ん」と岩坂の靈に擦り寄つて來る...「お外」の猫逹は、生き殘りさへすれば、いつかは元に戻る。後はルシフェルとの對決あるのみだ!



* 当該シリーズ第97話參照。



【ⅴ】


或る夜更け。牧野は、「開發センター」の事務局で、正體もなく寢てゐた。その顔を伺ふカンテラ。「龍」を呼び出す呪文「淸流龍從! 南無-」印を結び、護摩壇の灰を牧野に振り掛けながら、唱へた。すると牧野は眠りつゝ、大口を開けて「龍」を吐き出した!「フル、少し借りるぜ」カンテラは囁くと、「龍」に命じた。「これから少しの間だけ、俺の云ふ事を聞いて貰ひたい。良いか、『龍』?」-* 自分の片目を射拔いた、この勇者のたつての願ひとあつて、「龍」、「良カラウ」と何時もは重い口を開いた。



* 前シリーズ第24話參照。



【ⅵ】


ルシフェルは「ふれ愛ハウス」の上空にゐた。以前は感じられた妖氣がすつかり消えてゐる。これはだうした事だ!? 猫逹は人間に靡いたのか...「ふはゝ、ルシフェルよ。お久し振りだな」-「む、カンテラ。『龍』に跨つてをるのか」-「その通り。これなら貴様、空に逃げる譯にも行くまい」-「誰が逃げるつて?」ルシフェル、冷凍光線を指から發した。だが、「龍」の吐き出す水流が、カンテラの身代はりになり凍つたゞけで、カンテラ・サイドに被害はなかつた。「水責めだが」カンテラ、存分に「龍」をルシフェルに近寄せると、ルシフェルの躰に例の「聖水」を振り掛けた。「ぐわつ」-ルシフェル、火傷の如き痕跡を躰に殘し、逃げて行つた。



【ⅶ】


カンテラは深追ひはしなかつた。まだ奴の息の根を停める技は開發してゐない。こゝに至つての淺慮は禁物である。地表ではじろさんが、ルシフェルが(「思念上」の)地下に吸ひ込まれるやうに消えたのを、見届けてゐた。



【ⅷ】


これで「猫nekoふれ愛ハウス」設立の際のお話は終はり。なかなか苦勞を伴つた譯なのだが-



※※※※


〈秋没し冬勃興の空氣中 涙次〉



然もルシフェル、再生である。のつけからの苦闘を強いられた。今後が思ひやられる譯である。然し、薩田の「聖水」が効くのを確かめる事が出來、100點滿點中の50點、と云つたところ。果てさて、カンテラ一味、今度こそルシフェルを人間界・魔界・冥府の三界から放逐しなくては。カンテラにとつて今回の勝利は、ちと苦かつた事、こゝに記して置かう。


お仕舞ひ。ぢやまた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ