第2部 脱獄
街の暗部にある監獄。ここは、異能力犯罪者たちが一堂に会する場所だった。国家がその存在を隠し、強大な封印術と魔法結界で閉ざされたこの施設には、sランクからeランクまで数多の危険人物が収容されている。外界とは隔絶され、絶対的な管理のもと、彼らは自由を奪われていた。
その中で、一人の男が静かに動き出す。黒いマントに身を包み、笑った鬼の面を携える“デコーダー”。裏社会では“ストーカー”として恐れられる彼は、この混沌の中で唯一の自由を求めていた。孤高の犯罪者であり、誰とも組まず、ただ己の欲望だけで動く。
彼は仲介者として、裏世界の知人に接触し、脱獄計画の糸を手繰り寄せる。目的は明快だ。監獄の壁を壊し、同じく強者たちを解き放つことで、街をさらに混乱に陥れる。強敵とぶつかり合うその時こそ、彼が望む“強キャラ犯罪者ムーブ”が炸裂する舞台となる。
計画は密かに進行し、各ランクの犯罪者たちが動き始める。信頼も裏切りも入り混じる中で、“ストーカー”は冷徹に、自分だけの道を切り拓いていく。
闇に沈む監獄の一室で、黒いマントの男がゆっくりと座っていた。鬼の面はテーブルの上に置かれ、その笑みが薄暗い灯りの中で不気味に浮かぶ。部屋の扉が静かに開き、背の高い男が入ってきた。
「お前が、デコーダーか?」声は低く、鋭かった。
「そうだ。お前は裏社会の仲介者、ジョン・リーだな」デコーダーはゆっくりと顔を上げた。
「監獄からの脱獄計画、話は聞いた。だが、お前一人の力じゃ無理だ。協力者は?」
デコーダーは薄く笑った。「協力者はいない。俺は一匹狼だ。ただ、必要な奴らを解き放つだけだ。それにお前の情報がなければ、計画は始まらない」
ジョン・リーはテーブルに書類を広げ、指でなぞった。「この中に、sランクの連中がいる。どいつもこいつも厄介だが、街を壊すには悪くないな。あんたの望み通り、強者との“強キャラ犯罪者ムーブ”ができるだろう」
「面白い。俺は奴らと戦うつもりはない。むしろ利用する。互いの利害が一致すれば、敵同士でも共闘はできる」
ジョンはニヤリと笑う。「裏切りも当然覚悟だろう。そこが面白いところだ」
「その通りだ。誰も信用しない。信じるのは自分の力だけだ」
二人の間に沈黙が流れた。
「計画は具体的には?」
「夜明け前だ。監獄の結界が最も薄くなる時を狙う。あとは…お前の腕次第だ」
「わかっている。動き出そう」
そう言い残し、ジョンは部屋を後にした。
闇の中、デコーダーは鬼の面を手に取り、口元の笑みを思い浮かべる。
「また、新たな“鬼ごっこ”の始まりだ」