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第一章:スパイの少年
少年・ユウリは、敵国にスパイとして送り込まれた。
年齢は14歳。敵国の中学校に通いながら情報を集めていたが、ある日、交通事故に遭う。
記憶を失い、自国との通信手段も絶たれてしまう。
保護された彼は「リク」という名前で新しい戸籍を与えられ、施設を経て、里親の元で静かに暮らすようになる。
事故の影響で国籍も不明なまま、リクは”自分は普通の少年だ”と思い込み、周囲に馴染んでいく。
そんな中、転校先の学校でテレビの音楽番組が流れた。
歌うのは今や若者に人気のアイドル「ナオ」だった。
彼の目に浮かんだのは――なぜか、涙だった。