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第5話 無敵の参謀

副参謀ヨゲラを余裕で倒した一行。

次なる敵が現れる。

 道は、二手に分かれていた。 一方は川沿いを行く道。早く進めるが、魔物に見つかりやすい。 もう一方は、森の中の細い獣道。時間はかかるが、敵の目を避けやすい。


「川沿いで行こうぜ」 オレは即答した。 「ここからの時間短縮はデカい。無駄を省けば、それだけ早く魔王城に着ける」


 レオンが険しい表情で首を振る。 「見つかったら終わりだ。確実なのは森だ」


「は? 何の確実性があるんだよ。タイムロスってわかってんのか?」 「効率より、全滅のリスクを避けたい」


 珍しく強く主張するレオンに、オレはイラつきを隠せなかった。


「お前、魔王の参謀にビビってんのかよ? ヨゲラ倒しただろ?次もいけるって」


 険悪な空気が流れたが、レオンは一歩引いてうなずいた。「……わかった。川沿いで行こう」


 結果、オレの選択が、最悪を招いた。



 開けた河原に出た瞬間、空気が変わった。 風もないのに肌がぞわついた。空間が、静かに、冷たく歪んでいた。


「よくぞ来たな。勇者一行」


 頭上の岩の上に立っていたのは、漆黒のローブをまとった男。 長い髪。鋭い眼光。首には異様なまでに大きな数珠。


「参謀、ツゲラ……!」


 レオンが、剣を引き抜いた。


「相殺魔法の使い手か」「そう。我が魔法は全てを無に還す」


 オレは鼻で笑った。


「じゃ、試してみようか」


 水の魔法で霧を出し、そこに電撃を叩き込んで爆破。だが、ツゲラの放った白い閃光が爆風を打ち消した。


「ちっ」


 ならばドライアイスの槍。硫化水素の雨。どれもツゲラの白い魔法の奔流に触れた瞬間、音もなく霧散した。


 ツゲラは涼しげな顔で立っている。


「通用しないか……なんでも相殺できるんだな」


 レオンの声が響いた。「タクマ、見てみろ! あの数珠!」


 ツゲラの首の数珠。その一つひとつが、淡く光っている。そして、魔法を打ち消すたび、一つずつ、その光が消えていく。


「数珠の光……カウントか!」


 ルイスが叫んだ。「でも、千以上ある……!一つ消すごとに、一発って……」


「要するに、千発当てれば勝てるってことだろ?」 オレはニヤリと笑った。 「じゃあ、お披露目といこうか。オレの切り札――核融合魔法だ」


 杖を構える。 「魔力変換、位相収束、燃料はここに……!」


 詠唱とともに、空間が揺れ、青白い光が収束する。中心に、小さな太陽が生まれた。


 が――それは数秒で消えた。


「……っ」


 もう一度。だが、やはり失敗。三度目も、四度目も、光は現れては消えた。


「な、なぜだ……理論上は……!」


 オレは初めて焦った。核融合からの無尽蔵なエネルギーで圧倒する計画が。


「温存しすぎたな、タクマ」レオンの声が低く響く。

「くっ……!」


 ツゲラが不敵に笑う。「その顔が見たかった」


 一瞬で距離を詰めてきた。剣が閃く。死を覚悟した。が、ツゲラの動きより一瞬早く。


「行けッ!」レオンが叫び、ルイスが鋼鉄の精霊を召喚。ドルナに防御力を付与。ドルナが斧を手に飛び込んできた。


 金属がぶつかる音。ツゲラの剣を、ドルナの斧がはじいた。だが衝撃で俺の杖は折れ、右腕に激痛が走る。


「ぐっ……!」


 ドルナは吹き飛び、意識を失って倒れた。


「ドルナ!」


 リアが回復魔法を放とうとするが、ツゲラの風の刃に吹き飛ばされる。ルイスもその衝撃を受け、魔法詠唱の途中で気絶。オレの体は動かない。


 かろうじて立っているのは、レオンだけだった。


 剣を構え、ツゲラと対峙する。


「さて……君が最後か、勇者」


 ツゲラが静かに歩み寄る。剣と剣がぶつかる直前、レオンの瞳に、かすかな決意が宿った。

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