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第14話 オレたちの言葉

 ルイスの謎の魔法には強い力がある。エンチャントなのか?いや違う。もっと精神に作用する何かだ。


 考えている暇はない。魔王を倒す。ここで負けるわけにはいかない。考えろ。頭脳はやたらフル回転してる。魔王の術の全貌は見えない。だが、どちらにせよ倒すには膨大なエネルギーが必要になる。アレをやるか。以前は失敗したけれども、ルイスの力があればできる気がする。

 それにこの半年間、ただ前衛で殴ってたわけじゃない。ちゃんと、理論と実験を繰り返してきた。


 「来たれ雷鳴、圧縮!地磁気を軸として仮想磁場を生成!プラズマをリング状に!」

 光が炸裂し、オレの胸元に熱を感じる。


 ……来た、小さな太陽。核融合成功だ。前は失敗したが、あれから半年。改良に改良を重ねた超コンパクト太陽。

 魔王の“言葉”なんざ、物理で殴り飛ばす!


「行くぜ……!」


 リアが俺に向かって何かを投げた。受け止めてみると、それは小さな飴玉。これを飲めばいいんだな?脈打つエネルギーと一緒に、回復と強化が一気に注がれる。


「体内のアドレナリン、一時的に増やしたよ!限界までやっちゃっていいよ!後で反動来るかもだけど!」


 無茶言ってくれるぜ。まあここで勝てば反動なんぞいくらでも来てくれ。体が軽い。


 レオンの声が聞こえた。レオンは魔王の攻撃で部屋の向こう側に飛ばされている。声が届くとは思えない。再び脳に直接響いた。


「今だ、タクマ。3秒後にヤツの注意はルイスに向かう。ヤツは左手を上げて言葉を唱える。ヤツの腕の下から飛び込めばいける。」


 …?

 テレパシーと未来予知かよ、すげえなおい。もともと観察力がすごいヤツだとは思っていたけど。これもルイスの魔法の力か?皆の能力を覚醒させている?


 とにかくその言葉に従い、俺は魔王の正面に跳び出た。


 右拳を叩き込む。

 ゼロ距離から、太陽の熱エネルギーを解放――レーザー!

 からのもう一発!左フック!右ストレート!上段回し蹴り!!


「うおおおおおおお!!!」


 俺の怒涛の攻撃が魔王の鎧へとめり込む。しかしどうも手応えがない。この鎧、ダメージを吸収しているのか。


「無駄だ魔術師よ…」

「我が左腕よ、敵を焼け」


 魔王の左腕が外れた。外れ…た?そして小さな破片に分裂して部屋のあちこちに散らばった。破片から黒い炎のビームが放たれる。ビット兵器か…!


「私の盾は絶対だ」

 ドルナが落ち着いた声で語る。

「確かに、盾は前からの攻撃しか防げない。あちこちからの攻撃は防ぎきれない。だがーー守りたい想いは理屈を超える」

 そう言うと、ドルナの輪郭が歪んだ。そして、ドルナが2人になった。2人…?


「高速移動による分身じゃないな?本当に2人いる!」

 俺は魔王に攻撃を叩き込みながら言った。


「そう、二人いれば前後を守れる。そして、すべての方向から仲間たちを守るには…!」

 ドルナが4人になった。8人になった。16人に…そしてドルナたちは仲間のそれぞれを、四方八方から取り囲んだ。


「確かにこれなら絶対安心だぜ。しかしこの妙な鎧はどうしたもんか…」

「その鎧、鎧というより体の一部だね。ダメージを吸収する肌みたいな感じだよ。これを使ってみて!」

 ドルナたちに守られて、リアがすぐ後ろまで来ていた。手渡されたのは…トゲのついたナックル。トゲの先に紫色の液体がついている。


「よくわかんないけどやってみるぜ!」

 右手にナックルをつけ、魔王の脇腹をぶん殴る。パリンという音がして、触れた部分が黒から紫に変色した。

「うまくいった!魔王の組成を推測して、ウイルスを作ってみたよ!」


 やれやれとんでもないヒーラーだぜ。だがありがたい。紫になった部分は鎧がなくなっていて、明らかに攻撃が通る。


「おっしゃ行くぜフルパワー!」

 人工太陽の出力を上げる。両手両足、さらに膝、肘にもエネルギーを充填。左手のパンチ、エネルギー解放。右足でキック、エネルギー解放。無我夢中で攻撃を繰り出す。

 手応えがある。魔王の動きが鈍ってる。いける。しかしーー


「目障りだ勇者一行。消滅せよ。」

 いよいよ来たこの言葉。俺の手足が急速に薄くなってきた。さすがにまずくないか。

「消えないよ」

 レオンの落ち着いた声。気づくと、俺の手足はちゃんとある。消えてない。

「魔王、お前の術は把握した。言葉によって相手の心を操るんだろう?消えるかもしれない、そう思うから消えてしまうんだ。俺たちは消えない!」

 

 魔王が明らかにうろたえた。

「やかましい!お前たちの努力など無駄だ。私は死んでも、この世界のどこかに再誕する!」

 魔王が叫ぶ。


 ――だが。


 ルイスが、最後のページを開いた。

「この物語の結末は、僕が書く」


 そうして、彼はペンを走らせる。

"そして魔王は封印された"


 その瞬間、魔王の体が淡く光り、薄く、そして――冒険譚のページの中へと吸い込まれていく。


 言葉の力で生まれた魔王は、言葉によって封印された。

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