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第1話 水素爆発はロマン

 ドンッ――と腹の底に響く衝撃とともに、視界が暗転した。


 「……は?」


 目を覚ますと、俺は知らない森の中にいた。木漏れ日が差す静かな場所。スーツ姿で、手にはコンビニの袋を持っている。


 思い出した。トラックだ。青信号を渡っていたら、猛スピードのトラックに跳ねられて――


 「って、え!? これ、まさか……!」


 慌てて地面に落ちていた鏡らしきものを覗き込むと、そこには銀髪で端整な顔立ちの少年が映っていた。スーツじゃない。ローブだ。杖まである。


 「やっぱり、転生!? チート!? いやマジかよ!」


 しかも、頭の中にスキル一覧が流れ込んできた。


 【スキル取得:基礎魔術、構成魔術、元素制御、魔力視覚】


 「これは……科学×魔法のロマン来たッ!」


 この世界の魔法は、構造を理解すればするほど強くなる仕組みらしい。元素制御で水を分解、魔力で電流を流して水素を生成、それを圧縮して――


 


 「爆☆発☆だァァァアアア!!!」


 ……。


 


 ――一時間後。俺は村を襲っていた魔物の大群を水素爆発でまとめて消し飛ばし、村の人々と勇者一行から拍手喝采を浴びていた。


 


 「やったぞ! あんなに大量の魔物を、一撃で……!」  「すごいです魔法使い様! 勇者様より強いかも!」


 俺は謙遜するフリをしつつ、ちょっとドヤ顔。


 「いやあ、まあ知識さえあれば簡単ですよ。水と電気と魔力があれば、大抵のものは吹っ飛びますし」


 


 だがそのとき、勇者パーティーの後ろにいた一人が口を開いた。


 


 「……すごいです。でも、それでも魔王は倒せません」


 


 俺はそちらを見やる。小柄な少年だ。目立たない外見で、旅の間もずっと記録係をしていたようなやつ。たしか、召喚士とか名乗っていたか?


 


 「私は……子供の頃、魔王を見ました。間近で。そのときの魔力……こんな爆発じゃ、かすりもしません」


 


 俺は鼻で笑った。


 


 「へえ。それは貴重な体験だったな、召喚士くん。でもまあ、心配しなくてもいいよ。その“魔王”も、科学と魔法の力で分解してやるさ」


 


 召喚士は何か言いたげに口を開きかけたが、すぐに閉じた。俺はそれを気にも留めず、もう一度村人たちに向き直った。


 


 「さて。そろそろ次の町に行きますか。魔王? 待ってろよ、成敗してやる」


 


 そう――俺は最強の魔法使い。

 転生したからには、この世界も思い通りにしてやるのだ。

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