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8.黒幕

まさかと思った。この人を疑った事など一度もない。嫌な音を立てる心臓に息が上手く吸えない。


「割れた鏡から呪いの痕跡が出た。俺は病だったんじゃない。呪いにかかっていたんだ。」

「…!」

「良く考えてくれ。俺たちに能力を隠蔽出来たのは?俺と君を排除して得をするのは?王となったリカルドを裏で操作出来るのは?アンナを保護下に置き利用出来るのは?」


加奈は身震いした。冷たい汗が背中を伝う。心臓が五月蝿い。まるで見えない悪意が身体にまとわりついて、知らないうちに侵食されるようだ。


これは単純な毒殺未遂ではない。


そして気づいてゾッとする。柔和な表情だと思っていた男の糸のように細められた瞳は、モニカたちの方を向いている。


ロベルトは直ぐにスキルを使うが悔しそうに首を振る。


「俺の能力(スキル)が使えない。さっきすれ違った時もやってみたが上手くいかなかった。恐らく何か対策して来たんだろう。君なら見れないか?」


加奈は震えながらも、ロベルトに促され鑑定を行う。


『マッテオ・デナー(47歳)

神官長、奴隷取引元締、黒魔術師。容姿:白髪、赤目。性格:狡猾、残虐非道、狂暴凶悪、唯我独尊、卑劣。犯した罪:殺人、殺人教唆、脅迫、恐喝、強盗、横領、虐待、奴隷売買、売国…』


真っ黒だ。悲鳴を上げ飛び退いた加奈はロベルトに支えられ、倒れそうになる足を何とか踏ん張る。


かざした手の平から悪意が侵食し、身体全体を拘束する。

秘密を知られたこの男が突然動き出し自分の首を絞めてくる。


そんな幻影に取り憑かれ、身体はガタガタと震え出した。


ロベルトが「おい!しっかりしろ!」と叫んでいる。加奈は己を叱咤し、震える声で鑑定結果をロベルトに伝えた。そんな加奈をロベルトは優しく抱き締め、背中をさすってくれる。


「辛い事をさせてすまない。だが助かった。」

「これで、解決、出来ますよね…?」


そんな楽観的な希望を述べてみたがロベルトは首を振った。


「徹底的に調査したが全く尻尾を掴ませない。神殿は特殊で俺たちが許可なく入る事は出来ない。まして俺たちが知っている情報は目に見えない能力(スキル)で得たものだ。俺たちの能力は公表されてもいないし。」

「ええ!?そんな…!」

「俺は回復したばかりで信頼度も低い。口で言っても信じて貰えないだろう。決定的な場面を押さえて正式な捜査事由を得ないと…。」


ロベルトは小さく「すまない」と言って俯く。時間停止(タイムストップ)の残りは1分を切った。目の前は真っ暗だ。


もう駄目だ。


加奈は絶望のあまり膝から崩れ落ちる。




コツン




膝をついた拍子に何かが足に触れた。無意識に手を伸ばしそれに触れた。


加奈の涙が止まる。

絶望の象徴だったそれが、小さな希望に変わった瞬間だった。






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