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第2話(2) ギルド登録は爆臭と共に

「この爆臭……クセになるかも……!」


そんな奇特なことを口にする者が現れるはずもなく、ティナとスメルはギルドの酒場の隅で小さくなっていた。


「ねえスメル……ギルドって、もうちょっと温かく迎えてくれる場所かと思ってたんだけど……」


「俺もそう思ってたよ……でも実際は、入口に“換気中”の札が下がるほど歓迎されてるじゃないか」


「それは歓迎じゃなくて“緊急避難”なのよ!」


ティナは机に突っ伏して、ふにゃふにゃと顔面をテーブルに押しつけた。


そのとき――


「――あら、元気ないのね?ティナちゃん」


ふわりと、柔らかな声がかけられる。


ティナが顔をあげると、そこに立っていたのは――セリアだった。


制服姿ではなく、今日の彼女は……私服だった。


「なっ……!!??」


その瞬間、ティナの思考は停止した。


ふんわりと揺れる淡いピンクのニット。ややタイトなシルエット。そして、そのニットに包まれた――


「乳ぃぃぃぃぃいいぃっっ!!!???」


ティナが叫んだ。完全に叫んだ。


「ち、ちが……あ、あの、その……うぅ……」


「ふふ。どうかしら?たまには、こういう格好も」


セリアは胸元を押さえるようにして、少しだけ照れたように微笑んだ。


スメルが鼻血を吹きそうになりながら(体がない)、脳内で叫んだ。


(オイオイオイ、これはイカンって!この世界、視覚情報で魂まで吸われるやつじゃん!!)


ティナはごくりと唾を飲み込んだ。

だが次の瞬間、セリアの横を通った酒場の男性客が彼女にぶつかって――


「ボインッ!!」


「ッ……!!」


物理的に揺れた。

ティナの目がバグった。現実が揺らいだ。


「お、落ちた……!!」


「何が!?」


「私の……自己肯定感が地面まで落ちた……!!」


セリアが困ったように言う。


「そんなことないわよ。ティナちゃんは、すごく魅力的よ。元気で、明るくて、しっかりしてて、爆臭のスキルを持ってる人を連れてるのに、ちゃんと社会生活を営めてて……」


「フォローになってない!!」


ティナはテーブルに頭突きした。


そのとき、酒場の奥で新しい張り紙が出された。


【緊急調査:地下迷宮B層、未知のスキル反応あり】


セリアがふと真顔になった。


「……これ、あなたたち……行ってみる?」


「お、おおう?行けって言われたら行くけど……」


「このスキル反応、たぶん……“未鑑定スキル”よ。

それも、普通のとは……違うわ」


その言葉に、ティナとスメルの間に緊張が走る。


「未鑑定スキルって……“存在拒絶型”の可能性もあるってこと?」


「ええ。でも、あなたたちなら……辿り着けるかもしれない」


セリアの瞳が、わずかに揺れた。


その胸が、いや気持ちが――重くなったような気がした。


ティナは、じっと彼女を見つめた。


「わたし……セリアさんの胸に……じゃなくて、その、真剣さに……応えたい気がしてきた」


「……紛らわしい!!」


スメルのツッコミが炸裂した瞬間だった。


「というわけで、明日の朝一番、地下迷宮に出発します!」


「……いや、ちょっと待て。まだ“出発決定!”の流れじゃ……」


「なんなら今日行く!?今行く!?」


「おい落ち着け爆臭娘ッッ!!」


こうして爆臭とツッコミの暴走列車は、また新たな“スキルの謎”へと突き進んでいく。


全てはまだ、1001因果式の始まりにすぎない――



――――――――――



第2話(中編) セリアの胸囲と、ギルドの爆発


「……ティナ、なんかスゴいのきた」


「うん。あたしにも見えてる……」


二人の視線の先、ギルドのカウンターの奥――

そこには、今まさに制服の上から大気圧に反逆している異形の存在があった。


“――ばいん”


その音が聞こえた気がしたのは、きっと気のせいではない。


「まって……あれ、重力に勝ってない!?おっぱいが勝ってない!?」


「負けたら爆発しそうだな……あれ。ていうか何?圧縮魔導装甲?」


「違う!あれはセリアさんの……セリアさんの!」


ティナは涙を浮かべながら膝から崩れ落ちた。


「……おっぱいだってあんなに育つのか……くっ……努力ではどうにもならない壁ってあるのか……!」


「な、なあティナ!?しっかりして!?」


カウンターの奥、セリアは笑顔で帳簿に目を落としていた。


その胸元に咲くのは――ギルドの伝統、白と金の制服ボタン三連星。

一番上のボタンが「命を削って閉じてます」と訴えている。


「んふふ、ティナちゃん?」


セリアがティナに優しく声をかける。

だが、その声の振動すら、胸から響いてくるように錯覚してしまう。


「は、はい……っ!?」


「どうかしたの?さっきから目線が上下に行ったり来たりしてるわ」


「ちちちがうんですッ!!決してその……あの……その……ぐふっ!!」


ティナ、鼻血で沈黙。


「お姉さん、ちょっと制服のサイズ直そうかしら……最近、成長期なのよね~」


「成長期!?成長期って!?大人が!?人類って進化してるの!?人智を超えてるの!?え、女神か何かだったの!?ええええええええええっ!!」


「ティナ、落ち着け。精神が崩壊してるぞ!お前、ちょっとスキル暴走してるから!」


スメルが止めるも、時すでに遅し――ティナは謎の咒文を唱え始めた。


「おっぱいには個体差があり!努力では埋められぬ差異があり!されど戦う者として!羨ましさを乗り越えた先に!新たなる扉が――!」


「おい!ティナ!なんか詠唱構築してる!魔法起きるぞ!」


「“召喚――反転バスト・オーバーロード!”」


「なんか出たァァァァ!!」


爆風。白光。そして……。


「…………え?」


セリアの胸が……揺れていない。


「うそっ!?固定された!?バストの波動が止まった!!?」


「詠唱、失敗しました」


がっくりと崩れるティナ。セリアは爆風に微動だにせず、むしろ微笑んでいた。


「大丈夫よ、ティナちゃん。悩まなくても、お胸の大きさよりも――冒険者に必要なのは、強く生きる気持ちだから」


「セリアさん……!」


ティナはがしっとセリアの手を掴み、感極まった顔で言った。


「その言葉……心に沁みました……!」


「ところで、さっきの爆風でスロット装置壊れちゃったから、登録やり直しね?」


「うわぁあああああああああ!!!」


*


さて。ギルド内の騒ぎが少し落ち着いたその頃――

ティナとスメルの元に、新たな依頼が飛び込んでくる。


「君たちにちょうどいい依頼があるの」


セリアが差し出したのは、黒い封筒。そこには【ギルド公認トレーニング試験】の文字。


「内容は、街外れの《素数遺跡ダンジョン》に潜入し、因果スロット付きのモンスターコアを一つ持ち帰ること」


「素数遺跡……またクセがすごそうな響きだな……」


「大丈夫、セリアさんが選んでくれたなら、きっといい依頼だよ」


「……ただし。昨年度は、受験者の3割が“臭いで帰還不能”となってるから注意ね」


「お、俺のせい!?」


「スメル、喜べ。試験内容に“スメル耐性チェック”が加わったぞ。つまり――お前が“基準”だ」


「基準って!生物兵器なの俺!?」


そんなこんなで。


爆臭と貧乳と爆乳と、因果の狂騒曲が幕を開ける――。




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