5 研修
「誓約の指輪をはめれば、もう免許センターへの就職は決定しました。交わす書類はもう必要ありません」
今多さんはまじめな顔でそう言って、
「夏休みを利用して研修しませんか?」
と微笑んだ。
「もう、ですか?」 JKはあまりの早さに不満の声をあげる。夏休み初日からは嫌なんだな。その気持ちはわかるぞ。
「俺はいつでも大丈夫です」 今多さんが一緒なら。
「研修は、国が管理している研究用のダンジョンに入ることです」
「研修、やります!」 JK、変わり身早いな。
「ダンジョンで説明の続きをしましょう」
今多さんはそう言って席を立って、一緒に行きましょう、と言う。
JKと俺はあとをついていく。部屋を出るときに今多さんは、ダンジョン行ってきます、とデスクにいる男の人に声をかける。気をつけて、男はそう答えるだけだった。
車に乗って30分ほど、県のダンジョン総合研究所に着いた。
自動ドアの玄関から入り、地下へのエスカレーターに乗る。廊下の突き当たり、関係者以外立ち入り禁止の部屋に鍵を開けて入る。どうもオートロックのようだ。
先には扉があり、これはカードで開けた。その先には暗証番号の扉がある。
そこを抜けると ダンジョンの入り口があった。 厳重だ。ここが研究用のダンジョン?
まさか、こんな、建物内部にダンジョンがあるなんて。
俺とJKは意外な展開にことばがない。
入り口脇には武器が並んでいる。
今多さんは並んでる武器の奥から二丁のハンドガンとホルスターを取り出す。
「これが大宮さんの武器です」 受け取ると少し重い。ホンモノの銃……
「クズジョブなのに武器はカッコいいね」 クズ、四回目だ……泣くぞ。
「三十連発のハンドガン。一丁は弾詰まりを起こしたときの予備です。マガジンが四つ。こっちがBB弾」
そう言ってマガジンとBB弾が渡される。
? BB弾? 空気銃ということ? 笑うんじゃない! JK!
「大宮さんは【愚者】持ちです。ダンジョン内で魔物を殺してはいけません。これでアシスト値を上げます」
「どういうことですか?」
「【愚者】は魔物を殺して経験値を得ると、瞬く間に《愚考》《愚挙》《愚図》などのスキルを身につけます。これらは不意に自らに発動し、コントロールが効きません。その結果、確実に死にます」
「クズジョブすぎる……」 JK、それを言うな……やっぱり、ク、マイナスジョブだったんだ……ちくしょうー……
「だからこのジョブは、魔物を殺さずに攻撃した履歴を残すことが重要なんです。そうするとアシスト値というのが上がっていきます。アシスト値でスキル《※愚考》《※愚挙》《※愚図》を覚えると、自分ではなく魔物にそのスキルが使えるのです。印がつくので、見れば違いはすぐにわかります」
「いやらしいジョブね……」 このジョブにそんな成長方法があるのか。たしかにいやらしい。というか、いいところ、あったじゃん!
「よくそんなことが分かりましたね」
俺の問いに、今多さんが少しうつむいた。
「【愚者】持ちの人が試行錯誤の末に、そこまで調べたんです。もうその人はいません。私の先輩だった人です」
「「…………」」
今多さんは、気を取り直して、武器の中からレイピアを取り出す。
「水戸さんはこのレイピアで魔物にとどめを刺してください。【聖女】のジョブをできるだけ早く成長させましょう」
「頑張ります」 JK、いや、水戸さんというのか、やる気満々だな
「私はこれで行きます」
今多さんは武器の中から木刀を取り出す。
「「それで、大丈夫なんですか?」」 ユニゾンしたな。水戸さんも不安は一緒か。
「私は大丈夫。私のジョブは【剣聖】ですから」
えっ?
……水戸さん、口、閉じようよ……
「さあ、中に入りましょう。また、おいおい説明していきます」
今多さん、何者?
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