筋トレ6 筋トレが役立つ日が来た
ごきげんよう、キントレです。
今日も元気に奉仕活動しています。
孤児院の子どもたちに護身術を教えているの。
いつなんどき、モンスターが町に入ってくるかわからないからね。
町の中にモンスターが出ないなんていうご都合主義、マンガの世界だけよ。
「マッスルマッスルー! いい、みんな。腰を落として真っ直ぐ拳を打ち込む! ためらってはだめよ! 蹴るときはこう!」
「あーい。まっすりゅまっすりゅ〜」
正拳突きと蹴り技の特訓に付き合ってくれるちびっ子たち、センキュー。
「シスター・キントレ。すまんが町長さんのところで荷物を受け取ってもらえんか」
「はい、先生。もちろんです! すぐ行ってきますね!」
先生、腰が悪いから大変だものね。お年寄りは労る、これ私の信念。
町長のところで寄付された子ども服を受け取って担ぐ。米俵くらいの量がある。
帰路を歩いていると、軽鎧を着たロミオがやってきた。
また孤児院に顔を見せに来たようだ。
「お、シスター・キントレ。今日も奉仕活動をしてるのか」
「ごきげんようロミオさん」
「荷運び手伝うよ。女の子には重いだろ。そんで今度こそお茶行こ?」
ニッコリ笑顔でお断り。
「いえ。いい筋肉負荷になっているので心配ご無用です」
「相変わらず言ってる意味がわからない」
そんな話をしていると、町を囲う柵を乗り越えて、モンスターの群れが現れた。
スライムだけでなく、羽の生えた目玉……グライアイとかいうのが出てくる。
「ピるるるるるキャぁ!!」
「モンスターが!! 俺が撃退するからシスター・キントレも町の人たちと一緒に避難して……」
「私も戦う。一匹でも逃したら住民に被害が出ます」
抱えていた荷物を一旦置いて、迫ってきたグライアイを蹴り飛ばし、もう一体に正拳突きを叩き込む。
筋肉を鍛えてきてよかった。町の人を守れるもの。
「モンスター相手とはいえ、シスターが殺生なんてしていいのかい?」
「普段ちゃんとお祈りしているので、神様も今日くらい見逃してくれると思います」
ロミオと共闘して、モンスターの群れを追い払えた。
さっきロミオが言った通り、聖職者が命を奪うのはご法度。
町を守るためだから、シスター・アグネスに報告したら黙認してくれた。
ロミオは養父のもとに帰る前、修道院に挨拶をしに来た。
「またなシスター・キントレ。次に来るときはレストランじゃなくてトレーニングに誘うことにするぜ」
「お断りします。普通に、自分の婚約者だけを大切にしていてください」
女の子とのお茶デートが大好きな男が、なぜトレーニング。
乙女ゲームの男心ってわからないわ。