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見送る日々、過ぎ去らぬ日々

その公園は、午後の淡い光の中に

掲載日:2022/09/16

 その公園は、淡い金色を反射していた。

 近くの子供の声が走り回って、光を乱反射させていた。

 車椅子の君の思いが、その中に泳ぎだした。

 今はもう、決して歩けない君だけど、

 僕と僕らの子供と一緒に走った姿が

 キラキラと目の前に見えたのかもしれない。


 もしかしたら、僕達はそんな家族を持てたのかもしれない。

 意味のない言葉だったか、終わりの近い君にとっては。

 この時の公園の淡い金色が、儚い「もしも」の物語を近くに感じさせる。

 いや、違う。君にとっては今の現実さえも淡い物語でしかない。

 だから「もしも」の物語もある程度の意味を持つ。


 首を固定しているから、目だけが動いている。

 君がどんな思いで淡い風景を見ているのかはわからない。

 ぐつぐつというカニューレから聞こえた痰の音

 そんな音で、君が何かを感じた、何か意味のあるものを見つけたとわかったよ。

 前に回って君の顔をうかがうと、ほほ笑みが見えた。


 あの時、僕は君と別の道を選んだ。

 いや、違う。僕は君を置いて行ってしまった。

 今更、君のところに来ても、

 こうやって君の車いすを押しても、罪滅ぼしにすらならない。

 それでも、もう君はこの世から去るのだろうし、

 こういう僕もいつかはこの世を去る。そして何もなくなってしまう。


 君は、いまさら罪を問おうなどと言わないのだろう。

 いや、君ははじめから何も問おうとしていない。

 僕は君に断罪されてもおかしくないのだけれど、

 君は僕を罰する役を天に任せたんだ。

それが一番の厳しい断罪であることを、君は知っているんだ。


 また来るよ。

 僕はそう語りかけた。君は聞こえたのか、無視しているのか。


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