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見送る日々、過ぎ去らぬ日々

その公園は、午後の淡い光の中に

 その公園は、淡い金色を反射していた。

 近くの子供の声が走り回って、光を乱反射させていた。

 車椅子の君の思いが、その中に泳ぎだした。

 今はもう、決して歩けない君だけど、

 僕と僕らの子供と一緒に走った姿が

 キラキラと目の前に見えたのかもしれない。


 もしかしたら、僕達はそんな家族を持てたのかもしれない。

 意味のない言葉だったか、終わりの近い君にとっては。

 この時の公園の淡い金色が、儚い「もしも」の物語を近くに感じさせる。

 いや、違う。君にとっては今の現実さえも淡い物語でしかない。

 だから「もしも」の物語もある程度の意味を持つ。


 首を固定しているから、目だけが動いている。

 君がどんな思いで淡い風景を見ているのかはわからない。

 ぐつぐつというカニューレから聞こえた痰の音

 そんな音で、君が何かを感じた、何か意味のあるものを見つけたとわかったよ。

 前に回って君の顔をうかがうと、ほほ笑みが見えた。


 あの時、僕は君と別の道を選んだ。

 いや、違う。僕は君を置いて行ってしまった。

 今更、君のところに来ても、

 こうやって君の車いすを押しても、罪滅ぼしにすらならない。

 それでも、もう君はこの世から去るのだろうし、

 こういう僕もいつかはこの世を去る。そして何もなくなってしまう。


 君は、いまさら罪を問おうなどと言わないのだろう。

 いや、君ははじめから何も問おうとしていない。

 僕は君に断罪されてもおかしくないのだけれど、

 君は僕を罰する役を天に任せたんだ。

それが一番の厳しい断罪であることを、君は知っているんだ。


 また来るよ。

 僕はそう語りかけた。君は聞こえたのか、無視しているのか。


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