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死に戻って王太子に婚約破棄をしたら、ドSな司祭に婚約されました〜どうして未来で敵だった彼がこんなに甘やかしてくるのでしょうか〜  作者: まさかの


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再起

 過去で起きた出来事や私達がしてきたこと、そしてこれから起きることをブリジットへ伝えた。

 どんどん彼女の顔が蒼白になっていく。

 何かを支えにしていないと倒れてしまいそうなほど、衝撃を強く受けたようだった。


「それは本当なのですか?」



 彼女としては信じられない話だろう。

 未来では彼女どころか領地も無くなっているなんて。


「信じられないかもしれませんが本当です」

「そうよね……。でもやっと納得もできました。どうして貴女が王太子殿下と別れて、クリストフ猊下と結ばれたのかを。お二人は未来でも恋仲だったのでしょ?」



 それは違います、と否定しようとする前に、クリストフが「そうだ」と肯定した。

 どうして嘘を吐くのかと思ったが、彼が目で「ややこしくするな」と訴えていた。

 ここは大人しく本題に入ろう。


「もうあんな未来なんて来て欲しくないんです! どうか力を貸してください!」



 ガハリエを討伐するためにはこちらも準備をしていないといけない。

 それこそこの地で最終決戦を行うのだから、その領地主たる彼女の助けは必要不可欠だ。


「少しだけ考える時間をください……まだ色々と頭の整理が出来ておりませんの」


 混乱している彼女にこれ以上の無理強いはできなさそうだ。

 それに協力のために、彼女の父親の許可も必要なはずだ。

 一旦保留ということになり私達は部屋を借りて一泊することになった。

 ベッドに座って眠る準備をしているが、クリストフがずっと椅子に座って外を見ているのが気になった。


「まだ怒ってますの?」


 返事が無く、無視されている。なんだか悲しくなってきたので、先にベッドでふて寝をした。

 するといつのまに近づかれ、背中から抱きしめられた。


「びっくりしました! 聞こえているなら返事をしてください!」


 だがやはり返事がない。だが彼の抱く腕に力は入っておらず、優しく抱きしめていた。

 なんだかむず痒い。


「其方は恐くなかったのか?」

「ブリジットさんに伝えたことですか?」

「ああ」



 もちろん自分の出自を伝えるのは恐い。もしかしたら完全に否定されて、この場で殺されるかもしれないのだから。



「もちろん恐いですよ。でもクリスも知ったでしょ? ガハリエに無策で突っ込めばどうなるかを」

「そうだな」


 急に彼の抱きしめる力が強くなった。まるで今を噛みしめるように、私の首元に顔をうずめる。くすぐったいが茶化せる雰囲気でもない。

 過去に戻る前に何があったのかを教えてくれない。

 あの薬を飲んだ後に私はどのように死んだのだろうか。


「クリスはどうしてそんなに優しくしてくれるの?」

「其方が好きだからだ。いつも前を向いてひたむきに周りのために頑張れる其方を」

「私はそんな綺麗な心なんて持っていないよ」


 彼の抱きしめる力が緩まった。寝返りをうって彼に向き直った。


「実は初めて過去に戻ったとき、自分のことばかり考えていたんです。クリスに殺されないように、少しでも善人で在り続けようって。慣れない領地経営や害獣の討伐だって、少しでもクリスからよく見られたいからでしたの」



 彼は黙って話を聞く。相づちもうたずに黙っていた。もしかしたら幻滅されているかな、と思いながらも、それはそれでいいかもしれないとどんどん告白する。


「偽善だけど頑張ってみたの。そしたら領民もどんどん喜んでくれるし、ただの使用人だと思っていた皆も前よりも気軽に接してくれるようになったり。どんどん楽しくなってきたんだ」


 彼と一緒に短いながらも一生懸命やった。前よりも勉強したり、未来での経験が活きたりと、辛いだけではなく、楽しいこともあった思い出がどんどん蘇ってくる。


「レオナルドも最初はキザで女たらしだったのに、あんなに真面目になって、もしかしたら私も変われるかもって思ったり。だからね、もし過去に戻れるなら、皆のために頑張りたいなって。どうせいつか人は死ぬんだし、後悔せずに生きたいの」

「だから俺と逃げないのか?」

「うん……ごめんね」


 彼との駆け落ちはできない。おそらく一生後悔するだろう。

 ガハリエが生きていればまた組織は蘇る。そうなればまたあの男のお遊びで国がおかしくなっていく。いつ死ぬかも分からない化け物を野放しにはできない。そしてそれを倒せるのは私しかいないのだ。



「其方は強い」



 彼の目が強く私の目と結ばれる。ジーンと心が熱くなった。


「俺は自分のことばかりで、本当のソフィーを見ていなかったな」

「そんなことないですよ。だってクリスが居たからここまで来れたのですから。愛してます」



 彼に抱きついた。一人でいるとまた死んでしまうのではないかと不安になるが、彼の側にいると心配事が消し飛ぶ。



「もう怒っていないですか?」


 顔を少しだけのぞかせて、恐る恐る尋ねると彼は少し顔を赤くしていた。


「元々怒ってはおらぬ。其方はどこでそんな可愛い仕草を覚えるのだ」



 彼と一夜を明かし、私達はいったん家に帰り着いた。家に帰るとそれは大変で、お父様が剣を持ちだしてクリストフを殺そうとしたり、リタもまたクリストフを説教したりと、大変だった。

 リタの小言の内容が、私が普通の庶民の生活なんてできるはずないでしょ、だった。

 解せぬ。


 どうやら時も交流戦が終わって数日後くらいに戻ったようで、まだレオナルドも頭を丸める前のようだ。未来でリタが私の正体を知っていることは分かっているので、言われる前に二人っきりの時に私から話をした。



「まさかそのようなことが……申し訳ございません。一度ならず二度もお嬢様をお助けできなかったなんて」

「ううん、気にしないで。それよりも薬なんだけどものすごく頭が痛くなったんですよね。気付いたら過去に戻っているし、この薬で死んだのでしょうか。クリスも私がガハリエを追い詰めていたとは言ってくれたけど、それ以降の話は教えてくれませんの」



 リタは考え込む。


「そうですね。かなり昔の秘薬のため、もしかするとソフィアお嬢様の体質に合わないのかもしれませんね」


 それってどうしようもないってこと!?

 あの痛みは尋常では無く、意識が無くなったくらいなので、とても副作用が強そうだ。

 ガハリエを倒した後も本当に正気を保てるのだろうか。



「一度お嬢様用に改良した方がいいかもしれませんね」

「そうだね……えっ! そんなことできるのですか!」



 リタは頷く。だが問題もあった。


「ですが、奥様がレシピを紛失されてしまったので製法は分からなくなっております」

「えっ、お母様が!?」

「はい……転んだときにそのまま風に流されて谷底に落ちていきました」

「お母様……」


 そういえばお父様がお話をしてくださいましたが、けっこうおっちょこちょいなところがあると言っていた気がする。


「そうしますと製法なんて無いのですね……」

「いいえ、ありますよ」

「あるのですか!?」



 もしかして里というところだろうか。

 だがリタから言われたのはもっと別なところだった。

「里に伝わる話では原本は王族が所有されているそうです」

「王族……」


 元婚約者のリオネス王太子は私を忌み嫌っている。

 魔女であることを証明して私を断罪しようとしているのだ。

 あまり関わりたくないがそうも言っていられない状況だ。

 でもどうやって見せてもらおう。


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