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死に戻って王太子に婚約破棄をしたら、ドSな司祭に婚約されました〜どうして未来で敵だった彼がこんなに甘やかしてくるのでしょうか〜  作者: まさかの


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ブリジット邸へ

 クリストフと駆け落ちまがいなことをしたが、それはあっけなく頓挫した。

 理由は私なんだけども。

 野菜を買ったときにお金と一緒にある銅貨を渡した。それは誘拐などされたときに助けを呼ぶために考案されたものだ。家紋が入っていればその人物の特徴でほぼ特定できるのだ。


 そして保護された場合には必ず、その領地の貴族の家に連れて行かれる。

 大きな槍の家紋が屋敷に入っている家は一つしか無い。

 屋敷に案内されると、ブリジットが腕を組んで仁王立ちしていた。



「本当にソフィアさんでしたか……これはどういうことか説明もらえますか!」

「えっと……なんと言えばいいのか……」


 どこから話せばいいだろう。ブリジットは私達を気遣って使用人に席を外すように命令してくれた。

 そして困っている私からクリストフへ顔を向けた。


「猊下、この子の家から捜索について連絡が来ておりましたが、本当に猊下は駆け落ちしようとしたのですか?」



 彼は答えずに沈黙している。いくら彼でも居場所がバレてしまえば、私を連れて逃げるのは難しいだろう。

 だからこその無言だ。


「猊下、お話を聞いていますか? どうして貴方のような方がこのような行いをされるのですか?」

「そうしなければソフィーの命が危ないからだ」


 クリストフの目が今まで見たことがないほど荒んでいた。

 ブリジットも怯んでしまう。


「危ないっていったい何がありますの……」


 訳が分からない彼女はそう聞くしかないだろう。

 私は迷った。打開策も無く、全ての平穏を壊すしか活路が無いことに。

 もう後戻りができない。彼と一緒に逃げ続ける未来が最善なのかもしれない。

 しかしそれを選ぶことは、今の私はしない。



「ソフィアさん?」



 ブリジットは何かを感じたかのように私を見る。

 どう言おうか悩んだときに、結局ストレートに言うしかないと思った。

 言うのは恐ろしいが、これしかない。

 声を震わせないように意識した。


「わたくしが……正教会が恐れる魔女だからですよ」

「ソフィー!」


 突然暴露した私の口を彼が塞ぐ。だがもうブリジットには聞かれてしまっている。

 目を丸くして、信じられないと瞳孔が動いていた。



「離してクリス!」

「其方は何をしたのか分かっているのか! ここで通報されて魔女狩りの者達に追われたら、逃げきれないぞ!」


 クリストフの怒鳴る声が大きいせいで、部屋の外が騒がしくなってきた。

 外から中を気にする声が聞こえてきた。


「ブリジットお嬢様、大丈夫でしょうか」



 その声でハッとなったブリジットは私達と使用人のいるドアの方を交互に見た。

 そしてためらいながらも口を開く。


「ごめんなさい。わたくしが少し言い過ぎたみたいで。何もないからそのままお下がりなさい」

「かしこまりました!」



 ブリジットが私達を庇った。そのため使用人達も部屋に入ってくることは無かった。

 手で頭を抑える彼女は、私達に椅子に座るのを勧めた。

 立って話すには彼女にとって衝撃が強すぎたようだ。気持ちを落ちつかせようと彼女は深呼吸をした。

 翡翠の前髪を鬱陶しそうに払う。



「貴女が魔女かもしれないと噂が回ったときに調べましたの。猊下の領地は魔女によって滅ぼされたと。そんな強力な力を持つ人達を正教会が捕まえていることも。そうなると猊下は知っていて見逃していたのですね」

「そうだ」

「それはどうしてですか?」

「ソフィーを愛しているからだ」


 何のためらいもなく彼は答えた。それにブリジットは息を吐いた。


「ですがわたくしが通報した場合にはソフィアさんは捕まり、猊下も同罪になります。今ならまだ無関係を装えますよ」

「そんなことはせぬ。彼女がもし殺されるのなら、絶対に救い出すし、それが叶わなければ私も後を追う。それが責任でもあり、彼女を愛す覚悟だ」

「祖国を敵に回してもですか?」

「無論だ」


 ブリジットは確認を終えてから私へと向き直った。


「どうしてソフィアさんは私にそれを伝えたのですか?」


 私もこれを言ったのは同情を誘うためでは無い。

 二度の死を経て、絶対に目を逸らしてはいけないと実感した。

 私が魔女であるということは、どうしようとも変えられず、また隠し通すこともできないのだ。


「私はずっと魔女であるということを隠していました。クリスがいれば決してバレないだろうし、今の地位を捨てれば平穏な生活もできるでしょう。でも、それではダメなんです!」


 ガハリエを倒さねばずっと私のように魔女は生まれてくる。

 そして二十歳を過ぎればタイムリミットに怯えなければならない。

 それに普通の人々もガハリエの遊びによって、未来を奪われてしまうのだ。


「どうかお願いします! ブリジットさん、手を貸してください!」


 頭を下げて懇願する。秘密にしたまま解決するなんて出来ない。

 こうやって動かなければ決してガハリエには勝てない。

 ずっと逃げてきた狡猾な男を倒すには、個人では不可能なのだ。



「まずは話を聞いてからです。それを聞いてから判断します」


 頭を上げるとブリジットは優しい目を向けてくる。


「ありがとう……存じます」


 再度何度も頭を下げた。

 そして私は未来で起きた出来事を彼女に話をした。

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