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死に戻って王太子に婚約破棄をしたら、ドSな司祭に婚約されました〜どうして未来で敵だった彼がこんなに甘やかしてくるのでしょうか〜  作者: まさかの


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決戦

 王国内の大聖堂前にて。


 大勢の神官達が大聖堂に集まり、神様へお祈りを捧げている。

 魔女の始祖を討伐を絶対とし、もしかしたら生きて帰られない可能性もあるので、神の加護をお願いする。

 聖女である私セリーヌがやる気を鼓舞させるため、祈りの言葉を捧げた。

 気休めとはいえ、聖女の加護で神官達の力を底上げできるのだ。

 お祈りの時間が終われば各自で出征の最終準備をする。

 私も自室で少しの間だけ休憩を取る。


「ふう……」



 流石に力を使いすぎた。千の神官へ加護を与えたため、疲労感が押し寄せてくる。

 全力疾走した後のような感覚がある。ただ走った後には少しは爽快感があるだろうけども、これには全くない。

 しかしいくら疲れようとも、少しでも生存の可能性を上げるためには仕方が無い。

 ヒューゴは疲労回復のあるハーブティーを淹れてくる。

 それを私へくれると同時に小言を言う。


「ただの神官には過分な加護ですよ」

「私にとっては、みんな大事な信徒です。贔屓なんてできません」

「左様ですか」



 ヒューゴは何を言っても無駄だといわんばかりに別の方へ目を向ける。



「クリストフ大司教代理殿といえども、今回は生きて帰られる保証はありません。それでも構わないのですね」


 クリストフも今回は珍しく鎧を着て立っていた。

 静かに目を閉じているが、それだけでも存在感が際立っている。

 まるで眠れる獅子のように、居るだけで頼りがいを持たせるようだった。

 ゆっくり開ける彼の目を見た瞬間に思わず気圧された。



「私は必ず生きて帰ってくる。妻との約束だ」


 前とは違い差し違えるような危ない雰囲気が消えていた。

 休暇を出して、ソフィア様としばらく過ごしたのが良い方向へ向かったようだ。

 しかし、彼の実戦をほとんど見たことがないが、彼の威圧感である程度予測ができる。

 黒獅子の名は、伊達や酔狂ではないであろう。

 もしや彼一人で戦力は事足りるかもしれない。



「空回りしなければ良いですがね」

「ヒューゴ! ごめんなさいね、クリストフ司祭」


 憎まれ口を言うヒューゴの代わりに謝罪をする。

 ただ本人は「気にしてませんのでお顔をお上げください」と、大人な対応をされた。

 それに引き換えヒューゴの大人げなさはどうにかならないのか。


「それと奥方も出兵されるそうですね。勇ましい方ですが、生半可な力量では危険であると伝えていないのですかな」

「心配は無用です。彼女の力は交流戦で証明されております。もし対等な条件であれば、ヒューゴ司祭と渡り合えると思いますよ」



 妻のことになるとクリストフ司祭も黙ってはいなかった。

 二人の間でまるで冷たい空気が支配しているような錯覚もしてしまった。

 どうかヒューゴもこれ以上、余計なことを言わないでほしいと切に思う。


 ~~☆☆~~

 ガハリエの討伐前にお母様のお部屋から、大切に保管されていた宝石箱を持ち出した。

 中身を見ると、薬品の入った瓶が壊れないように大切に保管されており、手紙が二枚入っていた。

 お母様の記憶がほとんどないため、筆跡を見ても本人かは分からない。

 それでもなぜか懐かしさを覚えた。



 ソフィアちゃんへ


 これを読んでいるということは、わたくしも役目を全うできなかったのでしょうね。

 ナームエもしくはリタから話を聞いているかもしれないけど、わたくしは魔女の末裔、そして貴女もね。魔女の始祖が実験で作った子供の末裔である私達は、年齢を重ねるごとに、不思議な魔法の力が増していきます。だからこそ、魔女の始祖はわたくしたちが必ず死ぬように、自我を失う呪いも植え付けたのです。その呪いを消すには、魔女の始祖をこの世から消し去らなければなりません。そのため、里で私達は魔法の力を上げる試薬を完成させました。それと魔女の始祖を討ち滅ぼす私達の祖先の力があれば、滅ぼせるはずです。

 ですが、まだ肝心の魔女の始祖は見つかっていないため、わたくしは次に託します。

 どうか貴女からはこの魔女の呪いの因果が無くなることを切に願います。


 ごめんね、ソフィアちゃん。

 ごめんなさい、あなた。



 読み終えて、最後の文字が少しだけ霞んでいるのが、お母様の涙の跡だと分かる。

 誰だって死にたくないし、それをお父様にやらせてしまう辛さは想像もしたくない。


 宝石箱に入っている薬を懐に入れる。別紙で使い方も載っていた。

 あまりにも不吉な言葉が書かれているため、不安な気持ちが高まった。

 その力はあまりにも強大なため、もし一定時間で魔女の呪いが消えなければ、災厄に成り果ててしまうと。

 薬を服用すればもう後が無いということだ。


 馬車が止まり、ガハリエ討伐のため集まった騎士のための天幕がたくさん見える。

 国からも正教会に協力するように王命がくだされたため、騎士が野営していた。

 といっても、グロールング領と王国軍がほとんどだけども。

 するとリタはそれを不思議そうなにする。


「正教会から要請があったのなら、他の領地を呼ばない理由はなんでしょうか」

「どこもかしこも飢饉で余裕が無いからよ」



 遠征になればそれだけで食料が必要になる。そのため参加は任意となり、食料に余裕がある私達くらいしか参加できないのだ。


 しかしうちも潤沢に食料があるわけではない。

 短期決戦で終えないと、私達も強制帰還を考えないといけない。


 そのまま専用の天幕で一泊した後に、私達は騎士団の再編成を行う。

 山脈の中央を正教会、右翼はうち、左翼はグロールング家、そして王家は二手に分かれて両翼のサポートをすることになっていた。

 馬に乗って時間を待っていると、お父様が横にやってきた。


「ソフィー、体は大丈夫か? あまり丈夫ではないのだから無理をするな」

「ふふ。大丈夫ですよ。これでも訓練は続けて、体力が付いたのですから」


 地道にトレーニングの成果もあって、少しずつ体力が付いた。

 もしかすると栄養状態も良い今の方が、未来の私よりも強いかもしれない。


「そうか。だが無茶だけはするなよ。お前は大切な私達の娘だからな」

「お父様……」


 そして天国にいるお母様を考える。この因縁も今日で終わらせる。

 まだ戦いも始まっていないのに、気持ちがどんどん引き締まっていく。

 その時、大きな音が響いてきた。



「何事だ!」



 お父様が叫ぶと同時に、一斉に音のする方角へ目を向けた。

 大きな黒煙が空へと舞い上がり、何やら爆発したようだった。


「もしかしてガハリエ……!?」



 発生源は正教会達がいる陣営だ。

 まさか向こうから仕掛けてきた?

 そうなればこちらも援軍に行かねばならない。

 お父様にそれを伝えようとしたが、すでに理解していた。

 剣を抜刀して、全軍に指示を出そうとする。


「全員、正教会へ援護を――」

「前方より大量の魔物が出現! 前方より大量の魔物が出現!」


 お父様の声をかき消すように伝令が伝えに来た。

 それは前方に行かずとも分かるほど、空と陸を覆い尽くすほどの魔物の群れが山脈から現れてきた。

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