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第18話 孤独の勝者

 《悪魔》に連れ去れて空を飛んでいる黒狐。暗い闇に溶け込み、妹の居場所はもう分からない。


「放せ、邪魔だ」


 黒狐が至近距離で《悪魔》に即死の技を使う。相手は内臓が破裂して血を飛散させて彼女も解放された。彼女は空中から落下するも屋上へ着地する直前に地面を溶かし、更に衝撃自体も殺した。なので傍目からは受身も取らずに着地したように映る。


 空から落ちていく《悪魔》だったが当然すぐに復活を果たして口を開ける。


「ケモノ、コロス。クツジョク、ウケタ。ゼッタイ、コロス。コロス!」


「残機はちゃんと増やしたか? 100くらいなら速攻で終わるぞ」


 相手が喋ってる間にも容赦なく力を使って血しぶきを上げさせる。《悪魔》は再生を果たしながら両手に真っ赤な炎を作り出した。それを混ぜて小さな太陽を生み出して投げた。


 黒狐は瞬時に走って屋上から飛ぶ。向かいのマンションの壁にあるパイプを固定する金具を全て溶かした。パイプが倒れてくるので、それを掴んですぐに蹴りマンションのベランダへと飛び移る。背後では《悪魔》が放った小太陽が爆発して屋上を真っ赤に燃やしていた。

 大きな灯火は視界を広くして黒狐にも有難かった。


「周到に罠を準備してるなら他にも仲間がいると考えるべきか。おまけに妹もいないし、無茶はできないな」


 白猫と合流すべきか考える黒狐だったが、敵の総力が分からない以上固まって動くのは危険だった。だから、まずは目の前の敵を倒すと決める。


 飛行して迫ってくる《悪魔》を能力で殺し、復活して動こうとする前にも殺す。

 敵の手には緑の光が舞っているもおかまいなしに殺す。《悪魔》は不死身に近い身体のおかげで動きは単純だった。


 緑の光が形を変えて剣になる、と同時に光が消えた。次の瞬間、黒狐が立っているマンションが斜めに切断される。上階にいた彼女は当然崩壊する建物から身を投げ出される。


「そんな魔術もあるのか。本物の使い手と会いたかったね」


 黒狐は崩れてる建物の壁に手を伸ばし、壁の一部を溶かして掴める部分を作った。それを屋上の方へと何個も作って急いで駆け上る。屋上に立つと軽く助走をして更に向かいのビルへと飛んだ。


 ガラス窓を破って転がりすぐに立ち上がる。《悪魔》が右手を突き出していたので右手を溶かす。代わりに左手を突き出すなら左手も溶かす。《悪魔》は最後に口を開けて口内に光学エネルギーを溜め込んだ。


「おいおい。それは聞いてないよ」


 すぐにビルから飛び降りると、背後から強烈なビームが発射されて見事な大穴を空け、ビルがグラリと傾いた。その後、山なりに崩壊して砂埃が舞い上がる。


 黒狐は地面に着地する寸前で衝撃を和らげたものの、倒壊したビルの瓦礫に頭をぶつけて血を流してしまう。けれど、彼女は弱気にならずに立ち上がった。


「竜でも食べたのか。全く・・・」


 そんな彼女の真上から《悪魔》が有り得ない程の大口を開けて急降下していた。人1人丸呑みできそうな程だ。しかし、彼女はさり気なく一歩前に出てそれをかわした。


 ドン!


 地面と衝突した《悪魔》だったが起き上がるより前に黒狐に殺される。背中の翼は彼女に踏まれていた。


「本当に学習能力がないな。どんなに強い攻撃を持っていても当たらなかったら意味ないし。ま、その頭だから人間より知能が低下してるのは見て分かるけど」


 死んで死んで死んだ。


 《悪魔》はとにかく殺され続けた。

 動く前に死んでいる。復活したと思ったら死んでいる。思考の前に死んでいる。


 死んだと思ったら死んでいる。死んでいるのにまた死んだ。

 死が繰り返される。《悪魔》は雄叫びをあげるのも許されず、ただただ死に行くしかない。


 今まで殺して来た人間のように死ぬ。断末魔を楽しみながら殺した人間のように死ぬ。

 贓物を吐き出させて殺した人間のように死ぬ。泣いて命乞いしてきた人間のように死ぬ。


 《悪魔》はそれらを愉快や愉悦を感じていた。人の死は《悪魔》にとっての好物だ。

 わずかに動いた目で黒狐を見上げた。それを見て《悪魔》は言いえぬ恐怖を覚える。


 彼女の様子は特段変わっていない。いつも通り、何気ない日常を行うように、息を吐いて吸うように殺している。何の感情も信念も見られない。ただ冷めた目で殺していた。


 この時《悪魔》は思った。人を殺して喜ぶ自分は《悪魔》足りえていないと。

 本当の悪魔はまさしく・・・。


 グシャ。


 再生を繰り返していた《悪魔》はとうとう贓物の全てを撒き散らして倒れた。動く気配も再生する様子もない。何百という死が全ての残機を失わせたのだった。


「はぁ。ずっと力を使って疲れたな。少し休・・・」


 その瞬間、彼女は自分の背後に誰かが立っているのを感じた。いつの間に? いつから?

 分からないが、声がないなら敵しかないない。すぐに振り返って力を使った。

 そこには骸顔の《死神》が立っていた。そう立っていただけ。


 何かをするでもなく、ただ黒狐を見ている。《死神》の存在は黒狐も頭の隅にはあった。以前の奇襲で姿を見せたので必ずいると思った。だから、相手が動くよりも早く能力を使えた。


 しかし。


 何故か立っているだけの骸が黒狐を見下ろしている。倒れたのは黒狐の方だった。全身が溶ける感覚。皮膚が爛れ、臓器を失う感覚。これは自分の能力だ。何故、と思考しようとした時には意識を失っている。


 《死神》は革靴の音を鳴らして彼女の元へ近寄り死体を見る。


「私の痛みは《吊るされた男》に行き、あなたに『因果』が戻ります。戦いとはそういうものですよ、お嬢さん。さて、残るは一匹ですか。交渉に応じてくれるといいのですが」


 《死神》は黒狐の死体を引きずり、建物の中へと消えて行った。

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