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第4話

お茶会の時間が迫るなか、ティアと俺は母上の元に向かった。


「王妃様、この度の事、大変申し訳ありません」


ドレスの裾を持ち、左足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を曲げ、王妃から視線を外すこと無く挨拶をするティア。

その動作ひとつひとつがとても美しく、人目を引く。


母上がティアを気に入っているのは、勤勉である事、所作が美しい事、そして対話能力が高い事。

王太子妃としての能力が高いため、他の令嬢の追随を許さなかった。


本人に自覚は無かったがな。


「良いのよ。それに(わたくし)、とても楽しみなの、貴方の妹に興味があるのよ」


その興味は、優秀なティアの妹がどれほどの能力を持ってるかって意味だろ……

もし想像以上に無能と分かったら……


母上は優しいが王妃だ。

時に残酷な決断も容赦なく判断なさる。

ティアも、覚悟を決めたんだろう。その瞳に微かな決意が宿っている。


「ふふ、優秀な貴方の妹ですもの。何かしらの能力がなければ、クロードや貴女に婚約者を変えろなんて言ってこないでしょう?」


ふふっと笑う母上は、40を過ぎてるとは思えない若さで、とても美しい。

父上が決して手放さない上に、妾を作らないほど溺愛する理由も頷けるというものだ。


だがその分、母上に王妃としての責務が一気にのしかかった……

母上は王妃として王の補佐、王妃の公務を完璧にやり遂げ、その上で跡継ぎである俺を産み、子育ても乳母に任せず自ら行った強者だ。


なのに、老けることなく若々しいまま……魔女じゃないか?との噂が飛び交うほどの美しさ……本当に不思議だ。


「ミューティア」

「はい」

「貴方の今日のドレス、貴方の髪に映えていて素敵よ」

「ありがとうございます」


ティアはレースをあしらった長袖タイプのAラインドレスを身に付けていた。

色はオレンジ色。

ティアのクリームの髪によく似合っている。


「ふ、俺が選んだドレスが似合わない筈がないな」

「まぁ、ふふ。クロードもグウェンに似て独占欲が強いのかしら?」

「は?」

「いえ、ただ単に仕事を押し付ける相手が居なくなるのを避けてるだけかと……」

「おい」

「ふふ、そういうことにしてあげるわ。

さて、もうすぐ時間よ。行きましょう?ティア、クロード」

「はい、シェイミー王妃殿下」

「分かりました。母上」



お茶会会場となるのは王家が誇る薔薇の庭園だ。既に多くの令嬢が会場に到着している。

ただその中に、未だシェリアの名は上がってこなかった。


「ティア……」

「遅れてくる事は、主催者である王妃に対して無礼にあたる行為…全く……時間厳守とあれほど言ったのに……!」

「ふふ、大丈夫よ。まだ時間ではないわ……まだ……ね」


私たちが会場である庭園にたどり着いた時、マグナリア公爵令嬢の到着がメイドにより報告された。

時間としてはギリギリだが……まぁ、許容範囲……か?

いや、ダメだな……王家が主催する茶会だ。いくら公爵家と言えど、前もって来るのが礼儀だろう。


母上は……


ニコニコと笑顔を浮かべているが、目が笑っていなかった。


「遅くなって申し訳ありませんわ!支度に手間取ってしまいましたの」


パタパタと走ってくるシェリアに、場に集まった令嬢達の視線が集まる。

私達も振り返り固まった。


「……シェ……リア?……その格好は…………?」


馬鹿な女だな……やはり。


シェリア嬢が着てきたドレスは……

胸元が大きく開いたプリンセスラインのパーティドレスだった。

お茶会に来てくるには少々……いや大分場違いだ。


「あっ、お姉様!見て下さいませ!可愛いでしょ?このドレス!ドレープ部分がとても気に入ってますの」

「……シェリア、お茶会に、そのドレスは合いませんわ」

「そんな筈はありません。お父様もお母様も褒めて下さいましたから!」


そう言って後ろを振り向いたから、俺達もそちらを向くと……公爵夫妻が満面の笑顔でこちらを伺っていた。


まさか、両親を伴って来るとは思わなかった。シェリア嬢は一応成人を迎えているだろう……この国では、16歳を迎えたら社交デビューをし成人扱いになる。

夜会やお茶会と言った場所に親を伴うのは社交デビューする前までだ。デビュタントを迎えた者が未だ両親を伴うなど聞いたことがないぞ。


「……まぁ、いいわ。席に着きなさい。お茶会を始めましょう」


母上が主催者として全員を席に着かせ、お茶会は始まった。

既に母上のこめかみに青筋がたっている事は見なかったことにするか。

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