プロローグ
はじめまして、ミヤフジと言います。
仕事中に現実逃避で妄想していた内容を頑張って小説にしてみようと思い始めました。
仕事の都合不定期鈍足更新ですが、よろしくお願いします。
【祝】New Life Storyについて語るスレ part37【発売】
1.名無しのゲーマー
で、未プレイ民の俺から質問なんだけど実際どのくらい他のゲームと違うん?
2.名無しのゲーマー
まずはグラフィックだな。
初めてログインした奴の話だと現実かと勘違いした位ヤバいらしい。
3.名無しのゲーマー
新型のスパコンをビルのフロア丸々1つ分使って鯖管理してるんだっけ?
PV見たけどありゃ他のゲームと段違いだわ。
4.名無しのゲーマー
あとは全NPCに高性能AIを搭載しているらしい。
会話したけどまるで生きてるみたいだった。
5.名無しのゲーマー
お、プレイ済みってことは1陣プレイヤーか?
6.名無しのゲーマー
運良く初回ロッド抽選に当たって絶賛プレイ中。
この素晴らしさはプレイしないと絶対分からない。
7.名無しのゲーマー
今回の第2陣も抽選1万人だったし。
抽選当たった奴がまじ羨ましい。
8.名無しのゲーマー
たしか第2陣は今日からだっけ?
9.名無しのゲーマー
そそ。
初日からプレイするために有給とった奴が多過ぎてニュースにもなってたな……
10.名無しのゲーマー
誰だってそうする。
俺だってそうする。
11.名無しのゲーマー
実際、PVやデモプレイを見る限り完全にもう1つの人生みたいなもんだしなぁ。
グラフィック、高性能AIのNPC、圧倒的なプレイスタイルの自由度。
早く第3陣の抽選始まらないかなぁ。
12.名無しのゲーマー
最低後半年は待たなきゃだな。
13.名無しのゲーマー
俺は絶対に第3陣でプレイしてみせるぞ。
14.名無しのゲーマー
まぁ、がんばれ~
(以下雑談が続く……)
「ふぅ………」
中古で買った安物のノートパソコンから目線を外し、俺は先ほどまで見ていたとあるゲームについて書かれている掲示板を思い出しながらため息を吐いた。掲示板のpart1から見直してみたがやはりと言うべきか、全くまともな情報などは書かれておらず、新たにプレイできる第2陣プレイヤーの参入を羨む声やそのゲームスペックに対しての称賛ばかりが書かれているばかりだった。
ちらり……と、机の隅に置かれている傷1つ無い段ボールが視界に入った。ちょっとした電子レンジほどの大きさの段ボールは、つい先ほどまで読んでいたネット掲示板の向こう側に居るであろう彼らが最も羨む物が入っているのだ。
『New Life Story(ニュー ライフ ストーリー)』
直訳すれば『新たな人生の物語』だろうか。つい数年前に実用化されたフルダイブ技術により可能となった次世代VRゲーム。それまで主流だったVRゴーグルでのゲームスタイルは駆逐され、最早全てのゲームがフルダイブ型VRへと移行していった。
その中でも半年前に発売され、『キングオブ神ゲー』『VRMMO界の革命』とまで言われた次世代フルダイブVRMMOゲームがこの『New Life Story』略して『NLS』ある。
初回ロッドはなんと1万本限定、しかも店舗販売は一切なく全てが抽選式という商業的にやる気あんの?な発売であったが、その革命的なグラフィック、あり得ない程のプレイヤーの自由度、NLS内でのありとあらゆるシステムが他社のVRMMOゲームを圧倒しており、つい1ヶ月前に始まった第2陣プレイヤー抽選会では初回ロッドと同様1万本限定にも関わらず応募者はなんと約5000万人を越えていた。
そんな中で俺、『山口 宗也』もそんな第2陣抽選会に参加した1人だった。というか、参加させられた1人だった。
元々、俺はFPSゲームやシミュレーションゲームを主とするミリタリー系ゲームが好みであり、RPG(決してソ連の対戦車兵器ではない)系はあまり好きではなかったのだが、休日に買い物に行った商店街でたまたま福引き大会?があり、たまたま一回分引ける福引き券が財布に入っていたので『どうせ当たらないだろう』とハズレ前提で回して見れば、出てきた玉はなんと金色。
なんというか、運良く一等が当たったかと思えばまさかの一等の賞品がNLS第2陣抽選券だったのだ。
正直、当たるかも分からない抽選券など余りいらなかったので元勤めていた職場の同僚(そいつはRPGが大好きだったので譲ろうとしたら既に抽選券も持っていた)に当たったことを報告してしまったら有無を言わさず無理矢理抽選会に連行された、というわけだ。
1月という真冬真っ只中なのに、抽選会場となった某野球ドームはあまりの人口密度に夏のように蒸し暑く、大量の汗をかきながらようやく抽選会が始まった。
抽選方法は高校や大学の受験生の合格発表の様に抽選券に書かれている数字が掲示板に書かれていればめでたく当選、別室で商品を購入する流れだったのだが、何の因果か元同僚は見事に1ズレで落ちてしまい代わりに俺が当選してしまった。
『2-777』
それが俺の抽選番号だ。
あぁ、凄く当たりそうだろ?
まさか当たるとは思わなかった……
……ちなみに元同僚は『2-778』だった。
すまん、元同僚……
勿論俺は元同僚に譲ろうとしたのだが、どうやら当選者本人しか購入出来ない上に購入後の売買も禁止されているらしく、購入前に制約書まで書かされた。
いや、本当に稼ぐ気あんの?と感じるほどの対応だったが、当たってしまった物はしょうがないし、両手では足りない程の諭吉先生が飛んで言ってしまったことも大人気ゲームを手にいれたと思えば安いものだ(一億三千万人分のたった二万人だぞ?)
元同僚は血の涙を流していたが正直お前のことはどうでもいい。結局、たまには別ゲーも良いだろうと納得し自分でプレイすることにしたのだが、ログインできる当日になるまでどんなに調べても、剣と魔法が主体の王道ファンタジーMMOと言うこと以外殆どゲーム内の情報はわからず今に至るというわけである(しかもPVとデモプレイ映像、ホームページの公式説明位しか無かった)。
ゴソゴソとズボンの尻ポケットから煙草を取り出し火をつける。
ポケットに入れたまま椅子に座った為多少折れ曲がってしまった煙草を揺らしながら左腕の時計を見る。
時刻は昼の12:55。第2陣のログインは13:00からなのでもあと幾分もない。
「まぁなるようになるか………な?」
段ボールから購入時に一緒に付いてきたNLS限定コラボモデルのヘルメット型ハード機とNLSのソフトの入ったケースを取り出す。別に1台ハードは持っていたのだが、悲し気かな俺もゲーマーの端くれ、限定やコラボという言葉には勝てなかった。
ケースを開ければあるのは親指の爪程度の小さなカード。説明書はなく、精々保証書などのゲームに関係ない紙が数枚のみ。昔の据え置き型ゲームの物に比べかなり簡素な中身にやや物寂しさを感じつつも、カードをハードに差し込み電源コードをコンセントに差し込み準備は完了。
残り僅かな煙草を灰皿に押し消して、ハードを被りベッドに横になる。残り時間はあと1分30秒。
ハードの電源を入れれば、特徴的な起動音と共にハードが小さいがカン高い唸りをあげた。あとは音声認証式のゲームの起動コードを口に出すだけ。
10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……0
13:00
「リンク・スタート!!」
その言葉と共に俺の視界は暗転する。どんな出来事が待っているのか分からないことだらけだが、それはそれで1人のゲーマーとして面白そうだと思う。
さぁ新たな物語の始まりだ。