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第四話

「ここが今フィーナ様が使用している訓練施設です」


「……ありがとうございます」


 アーリアさんと別れてフィーナさんに会いに行こうとしました。結果、迷いました。

 どこかで見ていたのかと思うタイミングでいつものメイドさんが現れてここまで案内してくれた。


「さてフィーナさんはっと」


 気にしても仕方ないものはさくっと忘れることにしてフィーアさんを探す。訓練施設はさっき僕がいた場所とは違って外ではないみたいで、何人かが使用してるみたい。


 剣を振るっている人もいれば、瞑想しているような人もいる。フィーナさんは……素振りをしていた。


「ふっ……ふっ……!」


 昨日話した時は違ってすごく真剣な表情だった。僕は剣、というかそういったものに関しては素人だからよくわからないけど、フィーナさんの素振りはすごく鋭いように感じる。そしてよくよく聞いてみると、千二百、千二百一と回数を数えているのが聞こえる。


「すごいな……」


「っ!」


「うわたっ!?」


 近くで一言つぶやいたらいきなり剣を振られた。咄嗟にしゃがんで避けたけど、今思い切り振りぬいたよね!?


「あれハルキ君? いつの間に……ってごめん! 大丈夫だった!?」


「だ、大丈夫……運よく避けられたし……。寿命は縮んだ気がするけど」


「ほんとごめんね? 私ってば集中してると周りが見えなくなるみたいで」


 周りが見えないだけで、剣を振りぬかないでよ……と言いたかったけど申し訳なさそうなフィーナさんの表情を見て言葉を止めた。


「だけれど邪魔をされるとそれを本能的に排除しようとするのはどうなのかな、姉さん」


 だけれども少し離れたところにいたみたいだったセントさんがそんなことを言っていた。うん、呆れている様子を隠そうともしてない表情だ。やれやれ見たいな顔してる。


「いいかいハルキ。先ほどのでわかったかと思うけれど、この姉は少々危険だ。武器を持っているときは近づかないことをおすすめするよ?」


「ちょっと! そこまでひどくないからね! 確かに集中しているときはダメかもだけど、普段は問題ないからね!」


「さっきのを見ちゃうとセントさんが正しいように思えちゃうなぁ」


「ひどいよ!?」


 フィーナさんは心外だ! みたいな感じで怒ってる。なんか反応が妙に可愛らしいなぁ。セントさんはそうだろうそうだろうって頷いてる。きっと今までもいろいろあったんだろうなぁ……


「それでハルキはこんな時間にどうしたのだい? まだ朝食からそう経っていない。アーリア様といたのではなかったかな?」


「そうだよ! まさかお昼にもなってない時間にハルキ君と会えるとは思ってなかったよ! だ、だからさっきのは仕方ない、よね?」


「……僕以外だったらよかったの?」


 誰が相手でも、あの剣の一撃は危険だったと思うんだけど。


「あぁ。この館に住むものなら姉さんの危険性は理解しているからね。訓練中に話しかける、なんてことはしないのさ」


「な、なるほど」


 なんか納得した。でもそれなら教えておいてほしかったよ……


「あっと、僕がこんな時間にここに来たのはね」


「うんうん」


「なんだい? もしかしてアーリア様との魔力トレーニングがもう嫌にでもなったのかな?」


 あれ、僕が魔力について教えてもらってること知ってたのか。最初はそこからスタートが基本なのかもしれないなぁ。


「違うって。なんか魔力と対話をして魔法を一回使ってみたんだけど、初めて魔法を使ったわけだから今日はここまでにしましょうって言われてさ」


 そしたらフィーナさんがここにいるっていうのを教えてもらったから来たの。と続ける。


「……」


「ハルキ君すごーい! 確か魔法のないところから来たんだったよね? それなのにもう魔法を使ってみるなんてすごい才能だよ! 同じ勇者候補でも全然違うんだね!」


 セントさんは僕の言葉を聞いた瞬間、驚いた風に固まってしまった。それに対してフィーナさんはすごいすごいとはしゃいでいる。


 というか、うん? ちょっと待って。


「同じ勇者候補?」


 聞き捨てならないセリフが聞こえたぞ!


「あれ、言ってなかったっけ?」


 私もセントも勇者候補だよ? と悪びれる様子もなくフィーナさんは言い放った。


「そうなの!? 聞いてなかったよ!」


「そっかそっかー。忘れてたよー」


 笑っていても誤魔化されないよ!? 二人は僕が勇者候補としてこっちに来たことを知っていたわけなんだから、同じ仲間なら言っておくべきじゃないのかな!


「……ふぅ。別段伝えるのを忘れていたわけではないよ。ハルキの基礎がある程度固まれば私たちとの模擬戦闘なども行うつもりだったからね。その際に伝えようと思っていた。……姉さんはどうだか知らないけれど」


「そ、そうなんだよ! そのつもりだったんだよ!


「今さっき忘れてたよって笑ってたのフィーナさんだよね!」


 ……よし落ち着こう、とりあえずいいや、気にしないことにしよう。


「それで、私たちも勇者候補なんだけど、私なんて魔法ぜんぜんだし」


「私は魔法をメインに使うがね。ハルキのように初日から使える、などということはなかったよ。対話は私も済ませているが」


「んー、やっぱり初日から使えるようになるのって変なの?」


 アーリアさんも驚いていたようだったし、同じく魔法を使うらしいセントさんも驚いているみたい。


「変ってことはないんじゃない? 魔法がほとんど使えない私からしたら羨ましいよー!」


「変、だというのは言い過ぎかもしれない。だけど珍しいことは確かだ。そういえば魔法で思い出したのだが、ハルキの属性はなんだい? 私は土と風を使う、守りと補助がメインの魔法使いだが」


「私は火! と言っても私自身の強化を使える程度の完全前衛の剣士だけどね!」


 姉妹でも全然違うんだな。というか正反対じゃないか。いいコンビなのかもしれないけど。


「戦い方はまだわからないけど、属性は闇だよ」


 僕も武器を持って戦ったりするんだろうか? 全然想像がつかないけど。


「闇なんだ! 勇者キョウ様の再来みたいだね!」


 フィーアさんは闇と聞いた瞬間、さっきまで以上にはしゃいでる。そういえば闇属性の勇者が魔王を封じたんだっけ。再来って言われても困るけど……


「……闇、か。対話をした、ということだったけど、どんな魔法を使うのか見せてもらうことはできるかい?」


「あ、私も見たいなー」


「んー、見せるのはいいけど……初日だから今日はここまでってアーリアさんには言われてたんだけど、いいのかな?」


 別に疲れてたりとかしないし、魔力に異常があったりするわけじゃないから、僕自身は問題ないんだけど。


「少しくらいであれば大丈夫だよ。まだ今日という日は長いし、あまりなにもしないわけにもいかないのだしね」


「そっかー。それじゃアーリアさんに見せた魔法とは違う魔法を使ってみたいんだけど、いいかな?」


 魔力が使いたいと言った魔法のもう一つ。腐食とは別の魔法。


「構わない。何か準備はいるかい? 人形が必要であれば持ってくるが」


「それじゃ、何か守備的な魔法を使ってみててくれない? それに魔法をぶつけてみたいんだ」


 この魔法は対人の魔法じゃないからね。魔力にぶつける魔法とでもいえばいいのかな?


「魔法に魔法をぶつけるの? 魔法ってそういうものもあるんだねぇ」


「……ふむ。面白そうだ。では“アースクエイク”」


 少し離れたところの地面から岩の槍みたいなものが生えてきた。って、ここ訓練施設だよね? 外ですらないけど、いいのこれ?


「守備の魔法ではないがね。的は大きいほうがやりやすいだろう?」


「……うん、そうだね。じゃあ行くよ」


 《――――――》


「闇よ、喰らえ」


 黒いもやがセントさんと魔法にぶつかる。そして……


「すごい……」


「ふむ……」


 そのままセントさんの魔法の槍は消え去った。僕の魔法に喰われたわけだ。闇の魔法その二、“浸食”


「とまぁこんな感じだけど、よかった?」


「見た目はよくなかったけど、効果はすごいね! セントを見てても思うけど、私も魔法をバンバン使ってみたいなぁ……」


「姉さんの剣の腕のほうがよっぽどだと、私は思うけどね。それよりもハルキ、その魔法だが」


「うん?」


「君の魔力との対話の結果の魔法なのだよね?」


「そうだけど……それがどうかしたの?」


 何か心配事でもあるんだろうか?


「いや、大したことではないさ。なんにせよ、これは君の武器になると同時に、この魔法には欠点があるね」


「え、欠点?」


 フィーナさんもはてな顔だが、僕もさっぱりわからない。この浸食はそう簡単に破られる魔法じゃないと思うんだけど。


「では次はその欠点を説明するとともに、私の魔法も少しばかり見せるとしようか」


 セントさんは少し楽しそうな表情をしていた。ほのかに笑っている。昨日初めて出会ってからは初めて見る顔だった。

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