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第一話

「ふぅ。どうやら成功したみたいですね」


「アーリア様、お疲れ様です」


 扉を開け、光に包まれたと思ったら目の前には片目を閉じている綺麗な女の子と、それを守る騎士であろう男性が二人女の子の隣に立っていた。


「えっと……」


 そういえば女神さまは転生だって言っていたけど、赤ちゃんからやり直しとかじゃないし、それどころかそのまんまの身体のような気がするんだけど……これ、転生じゃなくない?


「ようこそおいで下さいました、勇者候補生様。私はアーリア・リングレイン。アーリアとお呼びください。本職は占い師ですが、今回貴方を召喚させていただきました」


「あ、ご丁寧にありがとうございます。僕は佐山さやま 治樹はるき、あっと、こっちだと治樹 佐山? になるのかな」


 か、勝手がわからない! 可愛い女の子を前にしていることで緊張しているのもあるけど、騎士さん二人からプレッシャーを感じるような気がする!


「ふふ、落ち着いてください。私たちは貴方の敵ではないのですから」


「は、はい」


 あわわわわ、僕のことを落ち着かせようと微笑んでくれたんだと思うけど、その微笑みが可愛くてまた……。絶対僕、今顔赤いよね……


「この場に召喚された、ということは魔王復活に備えての勇者候補になっていただけるのはご了承済みなのですよね?」


「あ、はい。詳しい話はわからないですけど、こっちの世界の女神さまに話は聞いてから来てますから……」


 改めて了承しているかと問われるとホントに了承したのか、よくわかんなくなっちゃうけど……。自分の意志でこっちに来たことは変わらないし、正しいよね? それにしても、一回も“転生”って言葉が出てこないんですけど、女神さまこれ転生じゃないんじゃ……

(誰にでも間違いはありますよ)と無表情の女神さまの言葉が聞こえた気がした。


「ありがとうございます。魔王復活を予知したのは私ですが、その強さは伝承に残るのみです。万全を期すために一人でも多くの勇者候補を集める必要がありました。今は貴方を含めて適性があるものは五人集まっています。無論適性がなくても実力のある方もいますので、それが全てではありませんが……」


「あの、その勇者としての適性? ですか。僕は元いた世界では戦いとは無縁の生活をしていたのですが、それでも大丈夫なものなんですか?」


 自慢じゃないが年下と喧嘩をしても勝てる気がしない。


「もちろん、魔物との戦いなど、訓練はしていただきますよ。それに適性は今の強さではなく、どれだけ強くなるか、なれるか。そこに集中していますので、今弱くても経験次第でとても強くなれるのです」


「そうなんですか……ところで僕は何ができるんでしょう? 僕の居た世界では魔法とかそういったものすらありませんでしたが」


 魔法使えるのかな? やっぱり男の子としてはそういったものには憧れるよなぁ。剣とかも憧れるけど。


「それを調べるのも私の仕事です。私は占い師。その占いを通してその人の適性などを見抜く力があります」


 ……もうそれ占いを通り越してない? いや、気にしちゃいけないのかな。魔王復活を予期した人だって言ってたし、それが認められるくらいにはすごい占い師ってことだもんね?


「なのでこれから貴方の能力を見ます。リラックスしていて下さればすぐに終わりますので」


 何もしなくていいってことなのかな。うん、話しているうちに緊張は解けてきたみたいだから大丈夫そうだけど。


「………………」


 うん、大丈夫じゃない。無言でじっとこちらを見ているのがすごい気になる。可愛い女の子にじっと見られている状態はすごく恥ずかしいものがあるよ!


「……ふぅ」


 あ、終わったのかな。目を閉じて軽く首を振ってる。

 ……なんで首を振ってるの? ダメだったってこと?


「お待たせいたしました」


「いや、別段待ってはいませんけど……」


 時間にしたら二分くらいだったし。たぶん。じっと見られてたせいか長く感じたけど。待っていたということはない。


「まずこちらの世界では皆、一つ以上のそれぞれの属性を持っています」


 アーリアさんの説明だと、火、水、風、土、光、闇、という属性があるらしい。定番だけど、時空とかのユニーク属性もあるらしい。ちなみにアーリアさんの属性は光らしい。うん、それっぽい。


「その中でハルキさんの属性は“闇”でした」


「え?」


 や、闇属性ですか? 僕勇者候補としてここに来たんじゃなかったでしたっけ?

 勇者なのに闇属性ってありなの? どちらかと言えば魔王側の属性の様に感じられるんだけど。


「ご心配されるのはわかりますが、大丈夫ですよ」


 心配そうな表情をしていたのだろう。アーリアさんはまたもやさしく微笑んでくれた。

 だからそれは緊張するんですよ! 言えないけど!


「確かに昔は闇属性は魔族の扱う汚れた属性として扱われていました。ですが、かの魔王を封印した勇者“キョウ”は闇属性の勇者だったのです。であれば、むしろ闇属性であることは勇者の再来と考える人もきっと出てくることでしょう」


 とはいえ魔王を倒した勇者は闇属性のキョウと、光属性のアルトであるという二つの説があるので一概には言えませんが。と、ちょっとそれでいいのかと思うことも付け加えられたけど、大丈夫なんだろうか。


「あとはこちらの世界の神の一人であられる“ソーヤ”様の加護により治癒力が上がっているようですね。微々たるものかもしれませんが、戦いに身を置く場合にはとてもありがたい加護になると思います」


 こっちの神様はソーヤ様っていうのか。そういえば女神さまの名前って聞いてない。


「それと気づいていますか?」


「え? 何にでしょうか?」


 唐突にそんなこと言われても検討がつかないんですけど。


「私たちは会話ができています。世界が違いますのでもちろん言語は違いますよね?」


「あ」


 た、確かに。普通に話せてたから全然気にしてなかったけど、世界が違うんだから当然言語も違うよね?


「そちらの女神さまの加護のようです。言語に不自由しないようにと会話はもちろん、読み書きもできるようになっているみたいです」


 これ、読めますよね? と書類が渡された。た、確かに読める。知らない文字のハズだけど、自動的に日本語に変換されてるみたい。

 えっと、“入学届”?


「読めましたか? 読めたようですね。はい、そちらは入学届になります。ハルキさんには勇者育成銘打っているアルトマージュ学園に入学していただきます。そこで他の勇者候補の方たちと鍛えていただく形になります」


「学園、ですか」


「はい。ですが今日はお疲れでしょうし、準備もあります。しばらくはこの館に泊まっていただき、学園の入学に伴って寮へ入っていただくことになりますね」


 確かに疲れてる……いや、肉体的にはそんなに疲れは感じないんだけど、精神的に疲れてる。というかいろいろな話があって、ついていけてない気がする。


「この館は私の弟子たちが住む場所ですので、来客用の部屋を用意させます。そこで少し休んでいただいた後は夕食にしましょう。もうじきいい時間になりますから」


「わ、わかりました」


「こちらです」


 いつの間にか近くにメイドさんがいた。え、いつの間に?


「メイドですので」


 しれっと心読まれた? なんか女神さまに似てる気がするんだけど。


「また、夕飯時にお会いしましょう」


「あ、はい。アーリアさんまたあとで」


 ちょっとついていけてないけど、とりあえず休もう。


「それと、ハルキさん」


「はい?」


 メイドさんについて行こうと思ったらアーリアさんに呼び止められた。


「もっと砕けた口調で構いませんよ? 私はもう癖になってしまっていますけど、ハルキさんもそうというわけではありませんよね?」


「えっと、うん。わかったそれじゃアーリアさんまたあとで」


「はい、またあとで」


 最後にまた微笑まれて部屋を後にした。うぅ……、この微笑には魔物が住んでる気がするよ……


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