第八十二話~うつろな目をした唯ちゃん~
着替えが終わって僕たちは教室に向かって歩いていた。
「優衣、次はもう皆と一緒にいこうと思ってるんだ。」
「どうして?」
「…………なんか今日の事があったからもうどうでもよくなったんだよね。」
うつろな目をした唯ちゃんは僕にそう言った。
今日のことが相当ショックだったのかもしれない。
「姉さん、しっかりして。教室に帰ったらもう帰れるんだから。」
「…………うん、そうだね。」
いつもの元気そうな声で返事は帰ってこない。
次の体育の時に何もなければいいけど…………。
「バイバイ、優香、優衣。」
「じゃあ、また明日学校で。」
「うん、また明日。」
「唯ちゃん、咲ちゃん、バイバーイ。」
僕たちは手を振りながら歩いていく二人を見ていた。
二人が前を向いて歩き始めると、僕たちは家の中に入った。
「ねぇ、優衣ちゃん。」
僕が家に上がると、優香が靴を脱ぎながら僕に話しかけてきた。
「どうしたの?」
「唯ちゃん、今日は元気なかったように見えたんだけど、優衣ちゃん…………お姉ちゃんは何か知らない?」
…………はじめてお姉ちゃん、って呼ばれたよ。
でもどうしてだろ?
「お姉ちゃん、って呼んじゃダメかな? …………どっちもゆいちゃんだから、分かりにくくなると思ってそう呼んだけど…………。」
「別にいいよ。いきなりの事だったからちょっと驚いただけ。」
「ありがとう…………で、お姉ちゃん、何か心当たりはある?」
心当たりしかない…………。
「多分、体育の着替えの事だと思うよ。僕は優香といたからなれたけど、唯ちゃんあんまり免疫ないと思うんだ。でも、これからなれていくから大丈夫だと思うよ。」
「そうだったんだ…………教えてくれてありがとう、お姉ちゃん。」
そう言って優香は少しほっとしたようだった。