第七十一話~最初からいたぞ。~
「じゃあ、早速本題にはいるけど、私ももとは男。で、あなたももとは男…………唯ちゃんのお母さんは?」
「…………両親には…………聞けないので、分からないです。」
「…………聞けない?」
「はい…………1ヶ月前に事故で…………。」
そう言って咲ちゃんは下を向いた。
「…………ごめんなさい。気を悪くさせるようなこと言っちゃって…………。」
静香さんは…………結構パニクってるよ。
「別にいいですよ。静香さんは知らなかったわけですし。」
「ありがとう…………じゃあ、ここから家が近い親戚はいる?」
「えーっと…………咲、誰かいたっけ?」
唯ちゃんは思い付かなかったのか、咲ちゃんに聞いた。
「うーん…………ここから近いのは美優さんの家じゃないかな?」
「…………美優さん?」
「はい。私たちの叔母なんですけど、家はここから歩いてすぐだと思います。」
静香さんの質問に咲ちゃんはすぐに答えた。
…………ここから歩いてすぐなのに、なんで唯ちゃんは思い付かなかったんだろう。
「一度電話してみます。」
そう言って咲ちゃんは鞄からスマホを取り出すと、電話をし始めた。
「…………もしもし、咲です。…………お久しぶりです。…………あの、今からお邪魔させていただいてもいいですか?…………じゃあ、すぐいきますね。」
咲ちゃんは通話終了のボタンを押して、スマホを鞄に戻した。
「いっても大丈夫らしいです。」
「じゃあ、行きますか。」
僕たちは支度をして、家を出た。
「ここです。」
僕たちは歩いて15分の一軒家だった。
…………僕たちの家より大きいかも。
「でけぇな…………。」
「そうだね兄さん…………兄さん!?」
「どうした?」
「何時からついてきてたの?」
最初からいたような気がするようなしないような…………。
「最初からいたぞ。静香さんと話ながらついてきてた。」
…………途中から静香さんが話しかけてこないと思っていたけど、まさか兄さんと話していたなんてね。
僕たちが話している間に、咲さんはインターホンを押した。
『はーい。』
そう言ってでてきたのは、黒髪の美人だった。
「いらっしゃい咲ちゃん…………その人達は…………
って、 静香?」
「やっぱり美優って、あんただったんだ…………。」
黒髪の人…………美優さんを見て静香さんは言った。
…………知り合いなのかな?
「髪やっぱり染めてるんだ。」
「まあね。さぁ、入って入って。」
そう言って僕たちは家に上がった。