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第六十五話~はい、本当です。~
あれから僕たちはリビングに移って、唯さんはしばらくしてから泣き止んだ。
「ごめん、急に泣いたりして。」
「い、いえ僕こそ、なにも考えずに変なこといっちゃって…………。」
「いいよ別に。いずれは受け入れなきゃならない事実なんだし。」
やはり唯さんももとは男だったらしい。
「唯さん、ひとつ言ってもいいですか?」
「何?」
「実はですね…………僕も少し前まで男だったんです。」
「…………えっ?ほんとに?」
「はい、本当です。」
僕がそう言うと唯さんは少し不思議そうに問いかけてきた。
「優衣は、女になってショックで泣いたりした?」
「…………泣いてませんね。むしろ受け入れてます。」
もとに戻れるなら戻りたいとは思う。
でも今は日々を楽しめばいい。
その過程でヒントを見つけていけばいいと思う。
「優衣は強いんだね…………俺決めた。明日から学校に行く。俺も受け入れる。」
そう言って唯さんは決意を固めた。