第三十四話~どちら様ですか?~
聞いたことのある声だ。
「兄さん、呼んでるよ?」
「こんな時間にいったい誰なんだ?」
こんな時間って…………まだ6時だよ?
それにしてもいったい誰なんだろう?
兄さんのこと知ってるみたいだけど、なんで呼び鈴ならさないんだろう?
兄さんが玄関の鍵を開ける音がした。
「…………どちら様ですか?」
「お邪魔しまーすっ♪」
「…………勝手に入らないでください!警察呼びますよ!」
「勇樹、もしかして私が誰かわからないの?」
「…………だから、どちら様ですか?」
何かもめてるなー、と思って、僕はリビングから顔を出した。
兄さんの前には20代位の金髪の女の人がいる。
…………きれいな人だな~
「やっぱり、わからないんだー…………『木村 静香』だよ…………叔母さんって、いったらわかる?」
木村 静香さんは僕達の叔母さんで、年は33くらいの母さんの妹。
…………それにしても叔母さんって、黒髪で眼鏡かけてなかったっけ?
僕は必死に思い出す。
…………うん、やっぱり黒髪に眼鏡かけてた。
「でもいつもは黒髪に眼鏡…………」
「私、髪染めないとこんな感じになっちゃうんだ。まぁ、これはこれで良いんだけど、人目を気にしていつもは染めてるんだ。それより、勇翔は?」
「えっ…………勇翔なら、そこにいますよ」
兄さんは僕を指差した。
すかさず、静香さんはこちらにかけてきた。
「勇翔、久しぶりー…………って、今は優衣だっけ」
「えっ…………あ、はい。お久しぶりです、静香さん」
「静香さんはやめてよ。せめて姉さんって言って!」
「…………姉さん?」
「そう、それだよっ!」
…………この人は僕に何をさせたいんだ?
意図が読めない。
「あれ?…………もしかして静香姉?」
後ろから髪の毛を拭いている優香が来た。
「あっ優香、久しぶりだね♪」
「やっぱり…………静香姉ーっ!」
優香は静香さんに抱きつく。
いつもこの調子だ。
…………それにしても優香はよく抱きつくよね。
「優香は可愛いな~。こんな妹ほしいな…………まぁ母さんの年じゃ無理だけど」
「静香姉、今日は泊まるの?」
「うん。一応泊まるつもりだよ」
「やったー!」
優香はすごい笑顔になった。
優香は、静香さんが好きだし、静香さんも優香のことは可愛がっている。
「それより優衣、今日はあなたのために来たんだから、あとで話そう」
「うん」
静香さんの顔が真剣な顔になった。