第三話~可愛い顔が台無しだよ~
兄さんが部屋を出てから数分後、階段を下りてくる足音が聞こえた。
ようやく降りてきたみたいだ。
よし、ちょっとふざけてみようかな♪
「お兄ちゃん、朝からなんなの?」
「ちょっとな…………とにかく、入ってくれればわかるから」
「分かったから、押さないでよ!」
優香がドアを開けて入ってきた。
初めになんて言うのか気になるなぁ、と思いながら優香に挨拶する。
「優香おはよう~」
「……………………誰?」
そうきたか。
……それなら!
「僕の事を忘れるなんて…………酷いよぅ……」
泣いてるふりをしてからかってみる。
…………ちょっと楽しいかも。
「泣かせてしまった!? な、なに私この人と知り合いなの!?」
「知り合いもなにも…………ふざけるのをやめろ、勇翔」
兄さんが真面目に言ってきた。
それもそうだよね。
僕のために兄さんは、動いてくれてるんだから、その兄さんの前でふざけるのは失礼だよね。
「ごめん兄さん」
「分かればいいんだ…………優香、今ちらっといったけど、いつは勇翔だ」
優香はそれを聞いて兄さんの方から、ゆっくりとこちらにひきつった顔を向けた。
「…………ほ、本当にユー君なの?」
「うん…………驚いた?」
僕がそういうと、さらに驚いたのか、ふらふらしてから一言、
「…………ちょっと、目眩が…………」
と言って、気絶してしまった。
なんで、気絶するんだよ!?
むしろ僕が気絶したいぐらいだよ!
僕は心の中で思いっきり叫んだ。
…………それにしても、どうしよう?
「勇翔、優香を運べるか?」
兄さんが、試すような物言いで言ってきた。
…………それにしても、兄さんは本当に冷静だな……
そこは「優香、大丈夫か!?」ぐらい、言ってもいいと思うんだけどな。
とりあえず優香を運ばなければ。
「聞いてるか、勇翔?」
「聞いてるよ」
僕は優香を持ち上げようと、手を首と膝の後ろに持っていき、持ち上げようとする、
「…………あれ?」
が、どうやっても持ち上がらない。
…………優香ってこんなに重たかったかな?
優香には、口がさけても言えないようなことを、心のなかで僕は呟いた。
「どうした?」
「……持ち…………上が……らない……」
「…………勇翔、俺の手思い切り握ってみろ」
「え?」
「いいから早く」
こんなときに兄さんは…………。
とりあえず、言われた通り思い切り握る。
「お前、握力落ちてるな」
「…………まじ?」
「ああ、身体能力は全部落ちてるかも知れねぇ」
なんだってー!
…………ということは、
「僕に優香は運べない!」
「まあ、そういうことだな。俺が運ぶから心配すんな」
「わかった…………って、なんで僕のベッド!?」
「いや、お前ら仲良いし」
…………まぁ、いいか。
あれから10分がたった。
「……………………ここは?」
「僕のベッドの上だよ」
僕の声を聞いて、優香はこちらに体を向けた。
「ユーくん!」
そう言って優香は、僕を抱き締めてきた。
そして、少ししてから泣き始めた。
「ど、どうしたの!?」
「だって…………ユー……くん…………女の子にっ……」
……優香は優しいな。
「……大丈夫だから…………そんなに泣くと、かわいい顔が台無しだよ?」
優香の頭を撫でながら言う。
「それに、容姿が変わっても、中身は僕だよ。どんなことがあろうとね」
僕は優香を安心させようと、そう言った。
その言葉を聞いて、優香は泣き止んだ。
優香にはああいったが、僕はそのとき内心こう思っていた。
「今日から僕は僕じゃない」と。
ちょっと今日は忙しくて、更新が遅れてしまいました。
明日も更新するかもです。
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