決着、そして・・・
言の葉の力でジュノーが沈黙しているうちにと、僕は言葉を紡ぐ。
「我を守護する無よ、彼の者にひと時の眠りを」
「!!!」
抵抗らしい抵抗もできず、ジュノーはがくりとその場に倒れる。
「・・・ジュノーは眠りにつきました。しばらくの間、目覚めることはないでしょう」
封印樹から届く、か細い母の声。やはりダメージは大きいらしい。
僕は小さく頷く。
「母上、これからどうすれば?・・・ジュノーがこの世界ごと母上を滅しようとしていたなどと、広めることはできません」
「そうね・・・カナン。まずはジュノーを封じる世界を創りなさい。そして、いずれ目覚めるジュノーと再び戦うために、力をつけるのです。・・・そのために、まずは貴方を創造主に任じます」
創造主に正式に任じられれば大きな力を得ることができる。僕は僅かに表情を固くする。
「大丈夫よ、闇の力に打ち勝った貴方なら」
穏やかな声で告げる母の言葉に、肩の力を抜く。
「・・・仰せの通りに、母上」
そして僕は、創造主となった。
母の力を借りて補佐たる“娘”を創った僕は、ひとつの世界を生み出した。
僕の命とも言うべき世界。この世界は全て僕とリンクするようにしておいた。いつ何があっても、封じたジュノーの目覚めを知ることが出来るように。
新世界は3つの層から成り立っている。上層を神族と人の住まう『神界』、下層を魔族の住まう『魔界』、その狭間の世界『メーゾ』。
『神界』には神クリオス、『魔界』には魔王デビコルトンという番人たるしもべを配した。
そして、約束の地から『メーゾ』へと住まいを移した僕は無人の大陸を造り、ジュノーを封印した。
何年の月日が流れただろう。僕はいい加減にイラだっていた。
「早く・・・」
いつしか僕はジュノーの目覚めを待ち望むようになった。
ジュノーの補佐として作られたために彼女からの影響をもろに受けてしまい、まだ暗黒期から脱することができずにいたのだ。
「早く、目覚めろ・・・」
ふいに強い力の気配が神界に現われる。
「・・・お前は!?」
僕は使役する風を使って間接的に攻撃を加えてから、ようやくその正体に気付く。
「なぜ、ここに・・・?」
『・・・“お前”と決別するためさ』
水晶球から見つめる僕に“そいつ”はニッと笑ってみせた。
目覚めの章 完