暗黒期
姉も僕も初めての暗黒期。これに耐えることができれば創造主として認められ、創製神の名のもとに正式に任じられる。
創造主に任じられれば今まで以上の権限を持つことができる。最も大きな権限といえば、自分一人で世界を創造できるということだろう。
僕自身、覚悟をしていたとはいえ、闇の力の増幅に翻弄されそうになり、他には手が回らなくなってしまう。
平常心の状態で暗黒期に突入した僕でさえこんな状態なのに、姉はどうなってしまうのだろうか、不安に思い母の元へと僕は急いだ。
しかし、予想に反して最初に倒れたのは母だった。驚いた周囲は更に仰天することになる。
創製神の城の後ろにある【創造の森】にある、封印樹が枯れ始めたのだ。それは、創製神の命と言えるモノで―――。
僕は気付いていた。それが姉の仕業であることを。そして、僕は封印樹の前へと来ていた。
― 創造の森 ―
「・・・待っていたよ。姉さん」
僕は振り返りざまにそう言った。言われた本人はわずかに表情を歪めた。
「やっぱり、アンタは気づいてたみたいね・・・そりゃそうか、だってアンタはアタシの補佐たるべき存在だものね」
まるで別人のような姉に、僕は姉が闇の力に負けてしまったのだと気づいた。
「姉さん、封印樹をどうするつもり?」
「わかってるんじゃないの?だからアンタはここに来た。違う?」
「・・・」
僕は無言のまま、悲しげに姉を見つめる。
姉は・・・ジュノーはギッと僕を睨みつける。瞳の奥には憎悪の炎が燃え上がっていた。
「・・・カナン。アタシはお母様が憎い!アンタが大ッ嫌い!・・・だから、なんでこんな容姿にしたのかなんてもう聞かない・・・すべてを壊してやる!!」
僕の中の何かのスイッチが押される。そんな、感覚だった。
「そうは、させないよ。・・・ジュノー」
冷たい声、冷たい瞳。そう、まるで僕ではない誰かがしゃべっているような・・・。
これは僕の暗黒面―――姉の暴走に呼応して生まれてしまった“悪”の人格。