前兆
あれから数日が経った。
姉は日に日に元気がなくなっていくようだった。
表情は精彩を欠き、外向的だったはずの姉が人と接することを嫌がるようになった。
僕は姉の姿が変わってしまったあの日以来、彼女の側に寄らなくなっていた。
心配でたまらなかったのに、すっかり天の邪鬼になってしまった僕は姉に会うことで自分の気持ちがざわつくのが嫌だったのだ。
それと同時に、僕は危惧していた。
このまま姉が暗黒期を迎えたら、どうなってしまうのだろうか、と。
暗黒期は創製神一族に何年かに1度来る体質変化のようなものだ。
光と闇の力を両方持つ創製神一族ならではのもので、その力のバランスが崩れて闇の力が増幅するため、暗黒期と呼ばれている。
始めて暗黒期を迎えた創製神一族は闇の力を抑えることに失敗すると、通常状態とは違う人格を生み出すことが稀にあるという。
その人格はほとんどの場合“悪”の属性を持つといわれている。
もし、姉が自身の闇の力の増大に身を任せてしまったら・・・。
姉の仄暗い瞳、それを見たときから感じていた焦燥。
そして、僕の危惧していたことは、最悪の状況で証明されることとなった。