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CANAAN ~創造主たちの約束の地~  作者: 冬華白輝
滅びる世界の章
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「リキューラ、君には“イオ”に引導を渡す役目を与えたね。それも思い出したかな?」


「・・・はい」


「“イオ”に残された人々までも滅びてしまうのは忍びないから、サラに新しい世界を創らせた。それも思い出した?」


「はい、全て」


 頷くリキューラに、カナンは満足げに笑った。


「うん、欠損はないみたいだね。記憶操作の術は同族には効きにくいから、かなりキツめにかけたんだよねぇ」


「かけられた時は結構キツかったことまで覚えてます・・・」


 カナンの全力、とまではいかなくても、本人いわくかなりキツめという術をかけられて、まだ創られたばかりだったリキューラには大きな負担となった。


 それはもう、それだけで記憶を失えるんじゃないかと思うくらいに。


「うんうん、何の問題もなさそうだ。・・・まぁ、俺と姉さんの最高傑作だしねー?あはは」


 最高傑作。創られた者にとってそう言ってもらえることが何よりも嬉しいことだと、この人はわかっていて言っているのだろうか。


 そんなことを思いながらちらりと視線を向けたリキューラに、カナンはわかっているよ、といわんばかりに微笑む。


 その時、バタン!と城の中から赤い髪の女性が飛び出してくる。


「あー、もう思い出しちゃったのー?・・・記憶無くしてたバージョンも見たかったのにぃ」


「あ、ゴメン。・・・でも、約束の時間に間に合わなかった姉さんが悪いってことで」


「ちょ、カナン!?それ、酷くない?!」


「全然酷くない」


 彼女1人が加わっただけで賑やかだ。リキューラは自然と笑みをうかべる。


「母上が加わると賑やかだね」


「んっもう!私のせいだけじゃないってば!」


 ふくれっ面の母親・ジュノーを見て、リキューラはクスクスと笑う。


「母上の反応が楽しいから、皆いじりたくなるんだよ。もうちょっと冷静に対応すればいいのに」


「ホント、リキュの言う通りだよね、姉さんは年長者らしくした方がいいよ」


「ちょっと、リキュはともかく、カナンだってちっとも年長者らしくないじゃないの!!」


「姉さんよりかはマシだと自負してるけど?」


「キーッ!!ムカつく!!」


 地団太を踏むジュノーに、リキューラだけでなくカナンやサントゥーラまで笑い始める。


 久々に会ったはずなのに、すんなりと馴染めている自分に、リキューラはホッとしていた。そして、足りない何かを思い出す。


「・・・マーテルは?」


 リキューラの問いに、カナンとジュノーはハッとして互いの顔を見合わせる。


「マーテルは・・・」


「新世界の準備をさせてるわよ。――あの子とあなたは双子だから・・・何もしなくても影響しあうってコトは覚えているわよね?」


「・・・うん」


 互いが互いのフォローをするために創られた、双子の創造主。それがリキューラとマーテルだった。


 双子ならではの繋がりでリキューラの体調や精神状態もすべてマーテルに影響するから、リキューラの様子を知るのにとても重宝したのだ。


「マーテルにはいつ会える?」


「まぁ、“イオ”を消滅させてからかしらねー・・・今は、新世界“アステ”にかかりっきりだし」


 ジュノーがそう答えると、リキューラはあからさまにがっかりした。創造主の場合精神体レベルの双子であるから、揃っていないの落ち着かないのだ。


 記憶を失っている間も何か足りないと思っていたのは、マーテルが傍にいなかったせいかもしれない。


「ねぇ、リキュ・・・“アステ”は私が創った世界だから・・・私も調整に戻らないといけないの」


「うん・・・」


「でも“イオ”の住民を移住させるまでは“アステ”の調整もできないし、最後まで付き合うからね!」


 そう言ってニッコリと笑ったサントゥーラに、リキューラはホッとする。


「良かった・・・1人で全部やるのはちょっと不安だったから・・・」


「そりゃ当然だよー、俺だってアリスがいなかったら・・・って思ったらゾッとするし」


 アリス、とはカナンの長女であり、創製神クマリがカナンの補佐のために共に創った創造主だ。


「そうよねぇ・・・アリスはしっかりさんだから、ちょっとカナンが抜けてても平気よね」


「まぁ、そうなんだけど。あの時はホントに姉さんのことで手一杯だったからねー、アリスには負担をかけてたなぁ・・・」


「う・・・悪かったわねぇ・・・」


 カナンに口では勝てないと判断したジュノーは早々に降参し、リキューラにこっそりと舌を出してみせる。


「ははっ、母上はカナン様にすっかり手綱握られちゃってるね」


「そこまで笑わなくても良いじゃなぁい・・・」


 思わず噴き出したリキューラを恨めしげに見つめ、ジュノーはぼそっと呟いた。


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