思い出す
2人はきちんと整備された森の中の道を進む。
「ここは理知の森というのよ」
「理知の森・・・理を知る森か」
「そう。“約束の地”の中でも一番重要な・・・創製神の本体がある場所よ」
「――へぇ・・・そうなんだ・・・」
リキューラは辺りを見回す。
「私達一族も、この理知の森で生まれたのよ」
「ああ・・・そっか・・・“俺達の本体”もここにあるのか・・・」
「そう言うコト。うん、理解が早くて大変結構だわ。・・・“約束の地”に来たから、封印が緩んでいるのかしら」
サントゥーラが嬉しそうに笑うので、リキューラは照れ臭そうにしてそっぽを向いた。
「なんとなく、覚えてるんだよ・・・たぶんだけど・・・」
「ふぅん、なるほどねー・・・あ、見えてきたわよ」
サントゥーラの指さす方を向けば、フォルスト王国のウィンドラー城よりもずっと立派な城が森の中にドン、と建っていた。
「・・・でっか」
「ま、そうよねー、収容人数を考えても、でっかいわよねー。あはは」
「笑い事じゃないし・・・」
ケラケラと笑うサントゥーラに小さくツッコミを入れつつ、リキューラはその城を見上げる。
「―――サラ、リキュ、お帰り」
「うわぁっ!?」
呆けていたつもりはなかったが、いつの間にか真横にいた金髪の青年に声をかけられ、リキューラははその場からとびのく。
「うわぁって・・・ちょっと傷つくなぁ・・・」
「あ・・・す、すみません・・・」
困ったように笑う青年の顔の左、眉の下辺りから頬の真ん中まではしる傷にリキューラの視線がくぎづけになる。
「―――気になる?」
「いえ、あの・・・痛くない、ですか?」
「今は全然。・・・それに、創造主の器の傷は本体に影響していないと“わかっている”だろう?リキュ」
クツリと笑う青年が本能的に格上だとわかってしまったリキューラは、思わず一歩後ろに引いてしまう。
「・・・お兄様、あんまりリキュをいじめないでよ」
見かねたサントゥーラが口をはさむと、青年はフッと目元を緩めた。
「いじめてるわけじゃないよ。ただ、姉さんにそっくりに育ったなァって思ってさ。・・・ああ、そうだね、ワケがわからないね?」
青年はそう言って、リキューラに大股一歩で近付き、その頭に手を乗せる。
「―――っ、あ!!」
ドッと流れ込んでくる記憶は、生まれたその瞬間から身につけていた創造主としての記憶。
コクマ家に連れて行かれた時、自分は既に5つになっていて―――赤子の姿ではなかった。
それもこれも全部、目の前の人と、自分の母の―――。
「思い出した?」
「はい・・・カナン、叔父上・・・」




