実の親の身分と思惑
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そうしてやってきたのは、フォルストと隣接する神族の国メンソを隔てる“ペガサスの森”と呼ばれる森の手前の公園。
その公園のベンチに腰をおろして息を整えたリキューラは、ちらりと隣にいる少女の表情を覗う。
実の親の使いだという彼女は神族らしく見目美しいが、その儚げな様子とは正反対にかなり力強くリキューラをこの公園まで引っ張って来てくれたように思う。
「・・・なぁ、サラ・・・記憶が戻る前にこんなことを訊いたらマズイのかもしれないけど、訊いていいか?」
「別にいいけど、答えられないような内容なら聞き流すわよ」
そう返ってくることはわかっていたので、リキューラは頷く。
じゃあ、どうぞ。と先を促されてその問いを口にする。
「・・・俺の親って結構、偉い人だったりするのか?」
サントゥーラの言葉の端々にそんな雰囲気を感じていたから、記憶を取り戻す前に聞いておきたかったのだ。
彼女は一瞬目を瞠り、それから小さくため息をつく。
「・・・そんなにわかりやすかったかしら、私」
「コクマ家は人の出入りも多いから・・・」
腹に一物抱えている国の重鎮達。役職が上になればなるほどそれを隠すのが上手くなる。そんな連中がよく出入りするコクマ家で過ごしていると人を見る目が養われる。
そう説明するとサントゥーラはああ、と納得の声をあげた。
「なるほどねぇ。私達は腹芸が得意じゃない―――っていうかやらないし。うん、あなたの親の思惑通りね」
「思惑・・・ね」
「―――ふふ。どうしてもね、人間っぽく育てたかったみたいよ?」
「人間っぽく?」
首を傾げるリキューラに、サントゥーラは笑みを深める。
「そう―――リキュは支配階級になるから、ね」
「へぇ・・・ッ!?し、支配階級!?」
「そう、支配階級。これで、答えになってるでしょ?」
答え―――リキューラの先ほどの問いに対するものだろうということに気づく。
「ああ・・・そうか、そういうことか。俺の親は支配階級の神族なんだな?」
「んー、近い、とだけ答えておくわ」
まだまだ隠されていることは多いらしい。
「で、どうやったら記憶にかけられたブロックを解くことができるんだ?」
「あのね、正直に言うと私の力では難しいの・・・だから、リキュの記憶のブロックが解ける方のところに連れて行く―――良い?」
「良いも悪いも・・・家出をした身だからな、俺。コクマ家から逃げ切るには神族の国に行くのが一番良い方法なんだ。こっちから頼みたいくらいだよ」
神族の国まではコクマ家の力は及ばない。彼等から逃げ切るつもりならばのらない手はない。
「じゃあ、決まりね!」
嬉しそうに手を叩いたサントゥーラ。
「―――サラ。これから、よろしくな?」
リキューラが握手を求めて手を差し出す。その手を握り返したサントゥーラはとろけるような笑みをうかべた。
「こちらこそ!」




