少年は道しるべを得て・・・
城下町は日が暮れても灯りがあふれ活気に満ちていた。客寄せの声があちこちから聞こえるが、少年は宿に直行しようと脇見もせずにそれらをすり抜けていく。
「もしもし、そこのお兄さん。そこの、赤い髪のお兄さん」
賑やかな町中でもやけにハッキリ聞こえたその声に少年は立ち止まり辺りを見回した。が、赤い髪を持つ人間はどうやら自分しかいないらしく、声のした方へおそるおそる視線を向ける。
「あはっ、やっとこっち向いた」
ニッコリと笑ってそう言った声の主に、少年はギョッとした。
「し・・・神族?」
明らかに人間離れした容姿を持つその声の主は、この国にいるはずもない神族だと確信させた。
「あら、やっぱりわかるのね?」
そう言って少年を呼び止めた神族の少女は、美しい湖水のような色をした髪を指でくるりともてあそんだ。
「なんで、人間の国に神族がいるんだ?」
訊ねる少年に、神族の少女は肩を軽く竦める。
「あら、別に罰則なんて無かったはずよ?ただ単に人間側が神族にアレコレ言われるのが嫌になって交流を断っただけじゃないの」
神族は創製神と直接交信が可能とあって、人間にとってはその存在自体が目の上のたんこぶだったわけだ。
「それはまぁ・・・そうなんだけど」
父がそれについては微妙な立場を取っていたことを思い出す。
父個人としては神族の言葉に耳を貸すことは良いことだという考えなだけに、人間の総意として神族からの“忠告”を完全に無視したことは非常に愚かしいことだと憤っていた。
とはいえ、父1人の意見で決まるわけではないため、そのことは渋々了承させられたのだ。
「お兄さん、表情変えないで色々と考えているみたいだけど・・・私の話を聞く気はあるかしら?」
神族の少女に声をかけられて、少年はハッとする。
「・・・お兄さんじゃない、俺はリキューラ。・・・歳は16」
「じゃあ、リキュって呼ぶわ。私はサントゥーラ。サラって呼んでね?歳はあなたと同じ16よ」
「・・・で、サラはなんで俺を呼び止めた?話って何だ?」
矢継ぎ早にリキューラが問いかければ、サントゥーラは目を細めた。
「まぁ、そんなに慌てないで?・・・ちゃんと話すから。もちろん、これはあなたにとって有益な情報よ?・・・あなたの本当の親について、だからね」
その言葉に、リキューラは思わず硬直した。




