創製神の気まぐれ
僕が【約束の地】に戻って数日後。
シュウェル族の長達が母の元へとやって来た。
シュウェル族は、僕や姉が創られる以前から母・クマリに仕えていた一族で、姉と良く似た容姿をしていた。
「次代のお姿は、まるで我等を模したようです」
「これでは、次代の威厳にも関わります」
シュウェル族の訴えは、次代である姉の容姿についてだった。
理由を話さない母に対して焦れたのか、シュウェル族の姿を変えて欲しいと長達は訴えた。
それに対する母の返答は冷淡なもので、考えておく、の一言だった。
そして次の日―――
「いやぁああああ!!」
つんざくような悲鳴が創製神の城に響き渡った。
姉・ジュノーの悲鳴だった。
僕達が駆けつけると、獣のような黄色い瞳に血のような赤い髪―――昨日までの面影が全くない姉の姿がそこにはあった。
僕達が駆けつけてしばらくすると、ようやく姉が落ち着いてくる。
容姿以外には変わったところなどない。
今まで通り、僕の姉であることに変わりはない。そう、僕は思っていた。
それに、このところ僕は姉を意識し過ぎていることに気づいて、彼女から距離を置いていた。
だからすぐに気づくことができなかったのだ。
姉の心に闇が巣食ったことを。
「もう平気・・・だから、しばらく1人にして」
冷たい言葉にも僕は素直に従った。
いつも通り、変わらない態度だと思ったから。いや、僕自身が自分の恋心を隠すために距離を置いたままにしたかったから。
この時、姉の変化に気づいていたら、結果は変わっていたのだろうか―――。