光の愛娘リィア
魔術師の戦いは言わずもがな魔術による戦いとなる。魔術といっても『神界』の人間が使う呪術とは形態はだいぶ異なる。
『メーゾ』は創造主が住まう世界。つまりは直轄地といってもいい。そして、魔力の源となるのは己が加護を受けている主。
魔術の威力は、主の加護を引き出せた量で決まる。
ジュノーはある程度の信頼を暗黒魔術師に寄せているのだろう。フィラルとの相性は最悪だと思っていたがなかなか善戦している。
「ふぅん・・・じゃあ、僕も負けていられないな。部下に引き出させるのではなくて・・・押し付けたら、面白いことになるかもね」
僕は水鏡でその戦いを眺めて呟く。
体調?そんな細かいことを言ってはいられない。なぜなら、いつジュノーが参戦してもいいように待機していなければならないからだ。
「お父様、それではフィラルの身体がもちませんでしょうに」
呆れた様子で呟いたのはアリシア。
いくらこの世界にリンクしているせいで弱っているとはいえ、僕は創造主だ。その加護を押し付ければフィラルの器は壊れてしまいかねない。・・・と、アリシアは思っているのだろう。
しかし、僕はなんの対策もせずに光の魔術師の一族を創り出したワケではない。
「・・・フィラルは、ね」
「・・・お父様?」
くすりと笑う僕に、アリシアは首を傾げた。
「父さん?」
ゼノンも不思議そうに僕を見つめる。
「まぁ、この時のために準備してきたわけだから・・・こういう事態もちゃんと想定してるってことだよ」
僕は水鏡に向けて掌をかざす。そして、イメージする。僕の力が彼女に流れ込むように。
「あっ・・・」
ゼノンが思わず声をあげた。
フィラルとの戦闘に意識が向いていた暗黒魔術師も、その後ろに控えていたリィアの突然の変化に攻撃の手を緩めた。
「まさか、お父様・・・リィアにとんでもない能力を授けたのではありませんか?」
「ふふ・・・そうだねぇ・・・『メーゾ』の住人だからこそ、僕の力の器になれる要素があったんだけど・・・概ね、僕の加護のせいかな?」
そう、水鏡に映る彼女の姿は、まるで女神のごとく金色に輝いていた。




