光の魔術師VS暗黒魔術師
「・・・本当にうまくいきましたね」
その水鏡に映るモノを見つめ、フィラルは硬い表情のままそう告げる。
「ああ。でも、これからが勝負だぞ」
フィラルの言葉に頷きながらゼノンが言えば、フィラルはフッと笑みをうかべた。
「お任せください。・・・ここから先は我々光の魔術師の力の見せ所ですね。リィア!」
「は、はい、兄様」
兄に呼ばれて顔をあげたリィアは、緊張のためか声を震わせる。
「私達の力をカナン様のために使う時が来た。私達はこの時のために生れた一族なのだから・・・そう緊張しなくていい。いつもの通りにやれば良いんだ」
「はい」
リィアの身体から余計な力が抜けるのを確認し、フィラルはゼノンに視線を向ける。
「ゼノン様、ここは我々にお任せください。・・・暗黒魔術師は創造主一族にとっては天敵のようなものです」
「・・・ああ、わかってる。気をつけてな?・・・あと、この世界は父さんの加護を受けているから、息子である俺の力を込めた護符も有効なはずだから」
そう言って、ゼノンはフィラルとリィアに水晶の護符を手渡す。
「創造主一族の方の力がこもった護符・・・ありがとうございます!」
フィラルが大切そうにその護符を懐に入れる。リィアもそれを大事そうに首から下げていた布袋に入れる。
「・・・それも、護符?」
ゼノンが訊ねれば、リィアはこくりと頷く。
「はい、母からもらったものです。兄も父から家督を譲りうけた際にもらったはずです」
「ええ、持ってますよ。・・・ほら」
先程護符を入れた懐、コートの裏に布袋が縫い付けられていた。
「これは初代の光の魔術師がカナン様から頂いたものだそうです」
「そうか、じゃあ効果抜群だな」
「はい、ゼノン様の護符もありますし・・・必ず無事に戻りますと、カナン様にお伝えください」
「・・・わかった」
ゼノンが力強く頷けばホッとしたように笑い、フィラルはリィアを連れて“ディフェンダコローノ”の元へと移動した。
***
天高くそびえる守護の柱、それを見上げる黒い影。
「・・・暗黒魔術師、だな」
緊張した面持ちで問いかけたフィラルに、その影が振り返る。
「そういうお前は、光の魔術師か・・・ジュノー様のおっしゃられた通りだな」
「・・・ジュノー様が?」
警戒して距離をとりながらフィラルが問う。
「カナン様の仕業とは思えないが・・・囮であることには間違いない、と。・・・そして、ここに来れば天敵ともいえるお前たち光の魔術師と対峙できる、とな」
ゼノンの作戦はしっかりとジュノーにバレていたようだ。
だが、それでも問題はない。囮だとわかっていても無視できないようにしたのだ。現にジュノーは部下である暗黒魔術師をこちらに寄越している。
「・・・それは望むところだ。決着をつけよう・・・暗黒魔術師オーガス・ジュガ!」
フィラルの裂帛の気合に、オーガスは口の端をつりあげた。
「来い」




