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きっかけ
姉はとても可愛い人だった。
僕は姉の補佐として創られたためか、姉に無条件で懐いた。
「姉さん、姉さん・・・」
一種のすり込みのように懐く僕を、姉は鬱陶しがっていたようだった。
「あっちへ行って、カナン。邪魔よ」
キツイ言葉をかけられても、僕は姉を慕った。
でも、内心ではわかっていた。これは―――作られた気持ちだ、と。
創られて間もない僕の力は不安定だった。
そして、恐れていたことが起きる。
姉を巻き込んで力を暴走させた僕を、誰も責めなかった。
良くあることだと慰めさえしてくれた。
僕は逃げた。
全てから。
だけど、満身創痍の姉が僕を連れ戻しに来た。
最初に平手で打たれ、力を暴走させたことを責められるのかと思った。
けれど、姉は責めるのではなく、檄をとばした。
「私と一緒にいたいならしっかりしなさい!!・・・あなたは、私の弟でしょう!?」
この気持ちが恋というものではないのかと僕は思った。
僕は作られた気持ちなんかではなく、深く、姉を愛するようになった。
これが、あの事件のきっかけになるとは思わずに・・・。