ゼノンの計画
「・・・というわけで、ジュノーおびき出し作戦の概要を説明するな!」
ニコニコと笑うゼノンを前にして、フィラルやリィアのみならずアリシアまでもが目を点にしていた。
わかる、わかるよ、その気持ち。だって僕も驚いたし。
「お・・・おびき出し作戦、ですか?」
フィラルがプルプル震えながら首傾げて問いかける。
「そう!ジュノーが父さんを弱らせるためにあちこち襲撃しているのは承知していると思う。そこでだ、ジュノーがどうしても無視できない情報を流して、おびき寄せる作戦を考えた」
この世界のダメージは自動的に僕へと流れてくる。その事実はジュノーもわかっていることだ。だが、そのダメージを軽減する何かが存在しているとしたら、ジュノーはどうするだろうか。
もちろん、それを破壊しにくるに決まっている。ダメージを軽減されてしまっては自分にかけられた封印が解けるのがそれだけ遅くなってしまうからだ。
「ゼノン・・・本当、貴方って冷静になればこんなにも良い作戦を思いつくのに・・・残念な子」
「姉さん!?その言い方酷くない!?」
「ホントのことでしょう?・・・お父様、ゼノンに“知恵”の力を与えたのはちょっともったいないと思いますの」
「そこまで言う!?」
シスコンなゼノンは涙目で反論するが、確かに感情の起伏が大きいゼノンは僕が与えた“知恵”の力をろくに使いこなせないでいる。
まぁ、僕だって生れたばかりの頃はうまく力を使いこなせなかったのだから、ゼノンもいつかは、と信じているけれど。
「まぁまぁ、アリスも自分が思いつかなかったからって、意地悪しないで?」
「・・・私だって、作戦くらい考えつきますの」
ぷ、とふくれて呟くアリシアはとても可愛らしいのだが、ここで親バカ発言してもしょうがないので僕はそれを自制した。
「とりあえず、ゼノンの作戦は試してみる価値はあるだろう?フィラル、リィア」
「はい、カナン様。思いつきもしませんでした。さすがは創造主一族の“知恵”を持つお方です」
フィラルが全肯定すれば、リィアもコクコクと頷く。
完全に手詰まり状態の今となってはそれに全てを託すしかないのだ。




