ナルーン城
本来いるべき時間軸へと戻って来た僕は、ナルーン城へと来ていた。
ラームはここにいると闇の力が僕を呼んでいるからだ。
「さて、この城にいるってことは・・・王位に就いたっていうことなのかな?」
城を見上げ僕はどうやって会おうかと悩む。いきなり行って王族に簡単に会える程この時代は平和ではない。
門の前で途方に暮れていると、門兵の1人が僕に気付いて近づいてくる。
怪しい人物だと思われたのだろうか?どう言い訳しようかと考えをめぐらせた時だった。
「あのー・・・あなた、風の民ですよね?」
門兵がおそるおそる訊ねてくる。
敵意は感じないから、捕らえようと思っているわけではなさそうだ。
「・・・ま、まあ、一応」
創造主です。とは言えないのでコクリと頷いておく。
「あの、じゃあ・・・カナンさんってお名前ですか?」
今度こそ僕は固まった。
なぜ、門兵が自分の名前を知っているのか、頭がついていかなかったのだ。
「・・・あれ、違います?」
「・・・い、いや、そうだけどっ!?」
答えた瞬間、門兵は僕の手をガシッと掴んでにっこりと笑った。
「いやぁ、良かったです!・・・風の民の風貌で少年から青年にかけた年頃のカナンという方が来たら、すぐにお通ししろと言われてましてねぇ」
「は・・・はあ」
僕はまぬけにもそう答えるしかなく、ずんずんと進む門兵に引っ張られながら城内を進んでいく。
そして謁見の間の前まで来ると、門兵がようやく僕の手を離してくれる。
「さあ、着きました。・・・ここから先、私が立ち入ることはできません。どうぞお進みください」
門兵に促されるまま、扉の前に立つ。すると、扉番が重い扉を開けてくれた。
ギギィィ・・・
扉が開いた瞬間、僕は玉座に座る青年とその隣に立つ青年の2人と思いきり目が合った。
「・・・カナン」
「・・・ラーム・・・?」
戸惑いながらも、僕の名を口にした玉座の隣に立つ青年・・・ラームの名を呼んでみる。
「・・・変わらないな、カナンは」
ふ、と溜息をついて、ラームは目を細める。
無邪気なあの頃の反応を期待していたわけではないけれど、時間の流れを感じた。




