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儀式の後で

「カナン!!」


慌てて、ラームが僕の側に駆け寄ってくる。儀式の際には魔法陣の外にいたピクルも慌てたように側に寄って来た。


「大丈夫!?カナン!」


「・・・ああ」


割としっかりとした返事をした僕に、ラームまでその場にへたり込む。


「・・・ラーム?・・・大丈夫か?」


「僕は平気だよ!・・・僕なんかより、自分の心配してよ!!・・・左目、大丈夫なの?」


怒ったように言うラームに、僕は頷いてみせる。


「大丈夫だよ。・・・左目に闇の力を封印していたんだ。だから、こうしなきゃいけなかった」


「・・・そう、なんだ」


掠れた声で呟き、ラームは目を伏せる。


「本当に大丈夫だから。・・・帰ろう?ラーム」


僕はラームを促し、魔法陣から出る。


「・・・長老様に、治癒してもらったほうが・・・」


ラームは僕の手を取り、心配そうに顔を覗き込む。


「今魔術で直すと、ラームに定着したばかりの闇の力が僕に戻ってきちゃうから。・・・大丈夫。この程度の傷はたいしたことないから」


僕の言葉に半信半疑ながらも、ラームは素直に頷いた。


「わかった・・・。あ、ハンカチで押さえて。とりあえず、止血だけでもしなくちゃ」


ラームは僕にハンカチを渡し、必死な形相をする。


「・・・ありがとう」


ぼくは、礼を言い、ラームから受け取ったハンカチを左目にあてた。





風の神殿の外に出ると、日は高くなり燦々と里を照らしていた。


「こんなに、時間が経ってたんだ」


驚いたように辺りを見回すラーム。その肩に乗りながら、ピクルが僕を振り返る。


“ちゅきっ、きゅう~。きゅきゅきゅ~(あの力、知ってる!・・・創造主様の力だ)”


「え、いきなりどうしたの?ピクル?・・・創造主って?」


ラームが当然のごとく反応したことに僕は驚いた。


ピクルは麗鬼だ。麗鬼は創製神と創造主との間の伝令役を務める他、魔王や神の下僕として働くことが多い。たとえ風の民といえど言葉を理解することは出来ないハズだ。僕の闇の力を手に入れたラームも例外ではない。


だが、目の前の現実は違った。


「・・・ラーム、ピクルの言葉がわかるの?」


「う?・・・うん。カナンもわかるの?・・・里のみんなはわからないって言うんだ」


「・・・そう」


魔力が無かった分、精霊の声を聞き分ける力を身に付けていたらしい。そうとわかれば、やることは一つ。


「ピクル、誓いの印を入れていいかな?」


“きゅ?・・・ちゅきっ!(え?・・・いいよ!)”


「・・・言の葉によりて、主従の誓いを・・・」


僕はそっとピクルの額に指をあてる。この印を入れられた麗鬼は界渡りの力を手に入れる。そして、もう一つのオプションがある。


「ふわ~!やっぱり、この力、創造主様の力だ!!」


「あれ?ピクル、普通にしゃべってる?」


ラームがピクルを抱き上げ、不思議そうに言う。


「そうだよ!創製神様や創造主様に主従の誓いの印を入れてもらうと、僕らはいろんな力を授かれるんだ」


「・・・って、ことは」


ちらり、とラームは僕を見る。その恐る恐るといった様子に、僕は思わず苦笑する。


「創造主のカナン・・・それが、本当の僕」


ギョッとして目を丸くし、ラームは僕の顔をまじまじと見つめた。


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