決別までのカウントダウン
それから小一時間ほどレイヤと話していた僕は、ラームの起きてくる気配に気づいて、そちらに視線を向ける。
「ふわぁ~・・・おはよ~、かぁさん・・・」
寝ぼけ眼を擦りながら、ラームは覚束ない足取りで、僕たちのいる部屋に入ってくる。
その腕には麗鬼と呼ばれる神獣が抱かれていた。
風の民の里に神獣がいること自体はおかしくないが、ラームに随分と懐いている様子を見ると、ペットのような扱いになっているのだとわかる。
神獣をペット・・・さすがラーム。なんて変な感心をしていると、僕の姿を視界に入れたラームが目を丸くする。
「ふえ?・・・カナン?」
「おはよう、ラーム」
「あ、おはよう・・・?」
にっこりと微笑んで挨拶した僕へ戸惑ったまま挨拶を返すラームに、思わず苦笑をもらす。
「そんなに驚かないで?・・・今日はラームにお願いしたいことがあって来たんだ」
そう告げると、ラームの目がきらりと輝く。
「お願いしたいことって何!?・・・僕に出来ること?」
「うん。・・・ラームにしか出来ないことなんだ」
ラームを安心させるように微笑み、僕は立ち上がる。
「風の神殿で待ってる・・・準備が終わったらおいで」
「か、風の神殿で・・・?」
ラームが途端躊躇した様子を見せる。チラリとレイヤに視線を送ってその表情を窺う辺り、風の神殿へ行くなと言い聞かせていたのはレイヤなのだろう。
「いってらっしゃい、カナン様と一緒ならば問題ないわ」
母親の許可を得たラームは僕に向かって嬉しそうに微笑む。
「カナン、すぐ準備するね!!」
「ああ、待ってるよ」
僕は後のことをレイヤに任せて、一足先に風の神殿に向かうことにした。
― 風の神殿
1人神殿の前に立ち、僕は天を見上げる。
「・・・さあ・・・お前と本当の決別だ」
そっと左目を押さえる。
僕の左目には闇の力が、そして右目には光の力が封じられている。片方を失うということは相当の負担になるし、悪くすれば創造主としての力のバランスを崩してしまうだろう。
・・・それでも、やらなければならない。ジュノーとの決着をつけるために。




