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風の神殿

「・・・着いたけど・・・」


ラームは居心地が悪そうにしている。それもそのはず、ここはレラロイドの神域。


許可された者しか入ることが許されていない、風の神殿。


「いつ来ても見事だねぇ。・・・決して朽ちることのない神殿。風の民の象徴だものね」


「い、良いのかなぁ・・・」


「大丈夫だよ。僕と一緒なら、ハギアだって怒らないよ」


「・・・う、うん」


ラームは未だに不安げに神殿を見つめている。入ってはいけないとよほどきつく言われているようだ。


「創造主の居る場所と唯一繋がる場所、だものね」


そう言いながら僕はラームを見る。“創造主”と聞いて、ラームの身体がビクリと跳ね上がる。


「・・・どうしたの?ラーム」


過剰な反応を示したラームが心配で、僕はラームと視線の位置を合わせるようにしてしゃがみ込み、彼と目を合わせる。


「・・・あのね、僕の母さん・・・もう、3年しか生きられないだろうって・・・。ねえ、カナン・・・創造主様にお願いできたら、お母さんを治してくれるかな?」


ラームの僕を見る茶色の大きな目が、涙で潤んでいた。


「ラーム?」


ラームは、ぼそぼそと口の中で呟く。


「僕の所為なんだ。・・・僕を産んだから、お母さんは」


周りは隠しきれていると思っているだろうが、きっと、風の民の特徴を知ってしまったのだろう。


この子は聡い。


「違うよ、ラーム」


そう、それはラームの所為じゃない。それだけは教えてあげなくては。


「違う・・・?」


「・・・風の民は時に縛られている。だから、ある程度を過ぎると歳をとらなくなる。それは知ってるね?」


ラームが頷くのを確認して、僕は続ける。


「創造主は考えた。自分と同じように悠久の時を生きる民を作ろうって。そうしたら、きっと、寂しくないから。・・・でも、どんどん子孫が増えていったら、里がいっぱいになってしまうだろう?」


「・・・うん」


「だからそういう風に創ったんだよ。子どもができたら歳をとりはじめるように。いままで生きてきた年数にもよるけど、10年近くの猶予があるからね。その間、残される者の心の準備も出来る」


「・・・うん」


「・・・だから、ね?・・・ラームの所為じゃないんだよ?」


僕はそっと、ラームの小さな身体を抱きしめた。




―――そう・・・君の所為じゃない。僕の我が儘だ。



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