風の民の里・レラロイド
「あっ!長老様だぁ!」
ラームが駆けだし、その青年に飛び付いた。ラームを抱きあげたものの、彼の視線はずっと僕へと向けられていた。
呆然としたままの彼に、僕は笑みを向ける。
「久しぶりだ。ハギア」
「・・・はい。カナン様」
ようやく微笑むハギア。
すると、その腕に抱かれていたラームがハギアを仰ぎ見た。
「カナンって、長老様よりエライの?」
ミレルも言葉には出さないが同様の疑問を持ったようで、たしなめもせず、ただハギアを見つめる。
困ってしまったのはハギアだ。当然、慌てて否定しようとする。
「・・・!あ、いや、その」
「エライわけじゃないよ、ラーム。僕が先に“創られた”だけなんだから」
まごつくハギアに助け船を出してやる。
「へぇ。そおなんだ」
素直に理解を示すと、ラームはハギアの腕から飛び降りて、僕の手を取った。
僕の手を取ったラームはにっこりと笑って小首を傾げた。
「ねえ、レラロイドに帰ってくるのは久しぶりなんでしょ?・・・僕、案内してあげるよ!」
「ぁ、ラーム・・・カナン様は・・・」
「そうだなぁ、本当に久しぶりだし。頼もうかな?」
制しようとしたハギアに目配せし、僕はラームの手を握り返す。
「それじゃ、カナン、連れてっちゃうからね!・・・ミレル、母さんに遅くなるって言っといてねぇ~」
「・・・ええ。わかったわ。行ってらっしゃい、ラーム。カナン様」
そうしてラームに案内されて里の中を見て回る。
「でぇ、あっちがマムーの家。マムーはね、レラロイドで一番の物知りなんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
ニコニコ顔で説明するラームに、すでにへとへとになってしまった僕はついていくだけで苦労している。
―――完全に運動不足だ。
「カナン、大丈夫?疲れた?」
「ん?・・・いや、平気だよ。それより連れて行って欲しいところがあるんだけどな?」
僕は、本来ここに来た目的を頭に思い浮かべた。・・・そう長居するわけにもいかない。
数日中には戻らなければ危険なのだから・・・。




