38
キンコンカンコーーン♪
授業終わりの合図が鳴る。
いよいよ放課後。
憂鬱な時間がやってきた。
周りに顔がないのは、
なんとなく慣れてきたさ。
元々、あたしって女子には嫌われキャラ
だったし、深いつながりなんてないんだから。
たわいない話して、おはようとか、さよなら、
じゃまたねー、って言葉で事足りる。
あたしが大事だったのは男・・・・
でも、それも今じゃみんな同じロボット。
正門に行くと、ロボットがひとつ立っていた。
あたしの、カレ。
あれがそう。
すぐに気づいたみたいで、
「ねえ、お腹すいたんじゃない?
何か、食べにいこか」
ロボットの横に並んで歩く。
捕まったみたいにロボットに連行されていく。
さて、今日はどこに連れて行く気だよ?
隣にいるのは理想的な男性だった。
はずなのになんでこんな気分なんだ。
連行場所はファミレスだった。
カレがメニューを選んでる。
何やら音がする、ゴソゴソ・・・
下に目をやると、貧乏ゆすりかい。
顔がないとよく目立つわ、それ。
「ねえ、これ美味しいよー」
と言ってわたしに食べさそうとする。
優しさ?のつもりか。
ありがとう、と言ってちゃんと食べる。
「あー、美味しかったね」
んん?
カレの皿には汚く残った食べ物の残がい。
「え、もういいの?」
って聞くと・・・
「もう、おれは食べ終わったけど」
えー、ぜんぜん残ってるし。
汚い食べ方するんだね、このロボットは。
カレが言う。
「ねえ、まだ時間、大丈夫かなーーー。
よかったら、公園とか行ってみないー?
日も落ちてちょうどいい感じだと思うよー」
語尾を伸ばすような、だるっぽいしゃべり方。
出たっ!
これは悪魔の誘いだ。
あたしを狙ってる。
あたしがロボットの餌食になる。
ほんとに、こいつが学校一の男だったのか。
暗闇で見たら単なるうっとしいやつじゃん。
あたしは伏し目がちに、
「あの、ごめんなさい。
今日はこれから習い事があるから」
「へぇ、習い事してるんだ?
ピアノとか、、、いや華道とかかな?」
おいおい、そんなお嬢様じゃありませーーん。
ま、小さいころは無理やり習わされてたけどさ。
ほんと、見た目だけで判断する甘いやつ。
あ、でもその点はあたしも同類だっけ。
「ううん、小さい頃から空手してるんで。
今じゃ、黒帯なんだよ」
さあ、どんな顔に変わったのかな。
ちょっと見てみたかった。
でも、声でわかったけどね。
明らかに慌ててる。
「えっ、そ、そうなんだ。
清楚な感じなのに、意外だね
・・・でも、そのギャップに逆に惹かれるよ」
なるほど、あの顔でそう付け加えられたら
さらに高感度アップだわ。
さすが、だてに校内一じゃないね。
でも、今のあたしには通じないのよ、残念。
あたしは、カレにゆるーく手を振って、
薄暗くなってきた街中を家に向かった。
今日も同じ場所にあの男がいた。
んー、やっぱり目に入るし
気になってしまうんだよね。
よーし、今度は大声で、
「おいっ、そこでなにしてるんだ、きみ!!」
男の動きが止まった。
さすがにびびったかな。
周りの視線までなんか感じるんだけど。
男がわたしを見た。
無精ひげで、髪もぐしゃぐしゃ。
まるでホームレスのような格好。
「ねえ、何を探してるの?」
少し間を空けて男がしゃべる。
「大切なもの・・・」
「昨日からずっと探してるよね?」
「うん」
「夜はどうしたの?」
「近くの公園で少しだけ仮眠を取った」
んー、これは困った。
ボランティア精神はちっともないけど・・・・
この男とだと普通の会話できるんだよな。
ま、ぜんぜんタイプじゃないんだけど。
「ねえ、あたしを見てどう思う?」
「若い、よね・・・?
高校生かな?」
あ、やっぱりこの男には顔が見えるんだ。
「じゃ、あの人は?」
と近くを歩く女性を指差す。
「あの、おばさん?」
あらあら、服装は若いのに
おばちゃんだったんだ。
ま、最近は多いけど。
って、そうじゃなくって・・・
この男には普通に見えてるみたいだ。
ますます気になってきたよ、あなたのことが。
「ねえ、ずっと探して疲れたでしょ?
うちでちょっと休んだら、どう」
男は戸惑っている。
「でも・・・早く探さないと」
「そんなに大切なものなの?」
「うん」
「何を探してるの?」
「それは、言えない」
こうなったら強行突破だ。
「でも、もう暗くなって見えにくいし。
それに暗いなかをひとり帰るの怖いし。
さっ、一緒にきなさいっ」
半ば無理やり、手を引っ張っていく。
これって逆ナン???
だったら、人生初体験。
あたしは男を家に連れ帰った。




